損害保険業界の基礎知識:損害保険とは一体、何?
損害保険業界……この名を聞いたことがあると思います。いわゆる保険業界であり、「損保」と呼ばれることも多い業界です。さて、保険の中で最も有名なのは生命保険だと思いますが、一般的には、『損害保険』という括りでは生命保険は扱いません。偶然の事故によって起きた損害を補償するのが主な目的となっています。生命保険とは、少し毛色が違う保険だということです。
もちろん、損害保険と生命保険を同時に扱っている企業もありますが、ここでは主に損害保険を扱う企業について解説をしていきます。損害保険業界に少しでも興味があるのでしたら、必ず最後までお読みください。損害保険業界がどのような所なのかわかります。
全体図を把握しよう!損害保険業界はこのような業界である
まず初めに、損害保険業界全体を解説します。どのような業界なのかを、ざっくりと、で構いませんので掴んでください。
損害保険業界を知ろう!数字でわかる損害保険業界の業界規模
平成26年の損害保険業界の業界規模は、約8兆円であり、業界の総資産額も57兆円と巨大です。この業界は、他の業界と少々異なった部分も多くあります。とくに大きな特徴は、代理店の存在です。代理店については、後で詳しく説明していきますが、保険会社と代理店は似て非なるものである、と覚えておいてください。
次に、業界の成長率にも注目してください。損害保険業界では、ここ5年間の間に業界規模を5%成長させています。備えあれば憂いなしが、キーワードの業界ですが、多くの人が備えを求めていることがわかるでしょう。
業界が成長しているのには当然理由があります。その1つが、自然災害の多さです。日本では、ここ数年地震の被害が各地で起こっています。誰もが他人事ではいられません。今までオマケのような存在だった地震保険が、火災保険なみに注目され加入者は増えています。自然災害の増加が、保険加入者を増やしている大きな要因の1つになっているのは間違いありません。
損害保険業界が抱えている現状と課題
損害保険業界は今、3強の時代と言われています。3つの企業が他社を圧倒していることに関しては、後で詳しく触れますが、この上位3社の保険収益の約48%は自動車保険での収益である、という事実があります。自動車保険に関しては、メガ損保の寡占状態です。
しかし、ご存知の通り若者世代の車離れは進んでいます。そのため、今後高齢化社会が進んでいくと、自動車保険での収益は減少していく、と予想されています。これまでと同じような収益を自動車保険で得ようとすれば、新たな考えが必要です。
たとえば、今まで以上に保険加入者の年齢によって保険料を大きく変えていくことです。具体的には、若者世代の自動車保険料を引き下げ、高齢者の自動車保険料を引き上げていくのが現実的でしょう。高齢者ドライバーの過失から生まれる大きな事故は、2015年にも非常に多くありました。彼らの保険料を大幅に引き上げるのは、現実的なプランです。
ただし保険料の引き上げといっても限界はあります。そのため、今まで損害保険業界の収益の柱になっていた、自動車保険以外からの収益も、考える必要が出てきています。
今後はどうなる損害保険業界!業界全体の展望はこれだ!
損害保険業界は、今後海外に目を向けていく必要があります。少子高齢化と若者の車離れを考えると、国内の市場全体が既に成熟化していますので、国内で数字を伸ばすよりも、海外に目を向けた方がはるかに効率良いからです。
損害保険業界は、今後海外に目を向けていく必要があります。少子高齢化と若者の車離れを考えると、国内の市場全体が既に成熟化しているのです。
日本国内では、保険が必要な人は既に入っている人ばかりになっています。保険に入っている人の保険料の総額が、日本は世界でアメリカに次ぐ第2位です。他国の人口を考えると、このデータから日本人は保険好きということがわかります。また、1人あたりがかけている保険料の金額はアメリカも抜き、世界で1位です。
古くから保険をかける習慣がある以上、もう行き渡るところには届いています。しかし、海外にはまだまだ保険をかける習慣さえない国がたくさんあるので、そちらに目を向けた方が、はるかに効率が良いのです。
保険がどの程度その国に根付いているのかを表す、保険普及率という言葉があります。この保険普及率は、全国民が支払っている保険金額とGDP(国内総生産)を比率で表したものです。この数字を見ると、その国にどれだけ保険が根付いているのかがよくわかります。保険普及率が高い国程、保険への加入が当たり前になっている、というわけです。
日本の保険普及率は、約11%です。この数字だけ見ても高いのか低いのか、わかりづらいかもしれません。しかし、他国の数字と比べるといかに日本に保険が根付いているのかは歴然です。たとえば、東南アジアや中国での保険普及率はわずか3%、インドも4%という低い数字であり、全世界平均の6.6%と比較しても、これらの国には、まだまだ損害保険業界の食い込む余地はあります。ちなみに保険料総額では全世界でトップのアメリカですが、保険普及率という面から見れば約8%と、日本にはかなり劣っているのです。それだけ、日本の損害保険業界は、成熟化している、ということです。
既に成熟化している国内よりも、将来的な固定顧客が見込める海外に目を向けることが、今後の業界全体の動きになっていくでしょう。