もくじ
もし辞めさせてもらえなかったら…どうしよう?
この記事では、仕事を辞めさせてもらえなかったときにどうすればいいか、対処法をお伝えします。
また、事前に円満に退職するための方法も掲載しているので、気になる方はチェックしてみてください。
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仕事を辞めさせてくれないのは違法
そもそも、仕事を辞めさせてくれないとしたらそれは違法行為であり、企業側には辞めさせない権利はありません。
企業側が、従業員を辞めさせないために様々な手段を取ってくる場合がありますが、それらも基本的に違法です。
どのような方法で辞めさせない可能性があるか、またそれらの違法性について確認していきましょう。
退職届の受け取り拒否や離職票の交付拒否は違法
退職する際に会社側に渡す書類として、退職のための伺いを立てる「退職願い」と、退職意思をはっきり伝える「退職届」があります。
退職願いはあくまで個人的な確認や事前意思の伝達なので、送らなくても問題ないですし、受け取られなくてもそれほど問題にはなりません。
ですが、退職届の受け取りを拒否するのは違法です。
また、退職者が「この会社を退職した」という証明書として「離職票」という書類を会社側は退職者に送らなければなりません。
この離職票の交付を拒むことも違法行為です。
会社側には退職届を受け取り、そして離職票を交付する義務があるため、拒否することはできないのです。
懲戒解雇の扱いにするなどの脅しも違法
過去に起こした失敗を挙げて「あのときの失敗のせいで懲戒解雇したことにするぞ」と脅したりする場合があります。
また「この時期に辞められると業務に悪影響を与えるので、損害賠償を要求する」といった脅しをされることもあるかもしれません。
その他「今月分の給与を支給しない」「退職金を支給しない」などといった脅しで引き止めようとすることもあるでしょう。
これらの脅しには全く正当性がなく、拘束力も効果もありません。
雇用側の優位性をもって脅す行為は違法ですし、あまりにも酷い場合には脅迫罪として訴えることもできるかもしれません。
有給休暇を消化させてくれないのも違法
社員からの有給休暇は、基本的に申請を受けたら受理しなければなりません。
有給休暇を消化させてくれないとしたら、それは違法行為です。
また有給休暇は社員のリフレッシュを目的としたものなので、基本的に買取は禁止されています。
ただし、いくつか特例があり、あらかじめ就業規則に記載されている必要があるものの、退職する際に残っている有給休暇の買取は特別に許されています。
有給休暇を消化させてくれないのであれば、買取をしてもらうこともできるのです。
いずれにせよ、会社側の都合で有給休暇を消化させてくれない、または買い取ってくれないとしたら、それは違法行為です。
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
一般的な引き止めは違法ではない
退職の意思を曲げようとする様々な手段がありますが、紹介したように、違法行為の可能性があります。
ですが、辞めようと考えている社員に対して、一般的な引き止めが行われるとしても、それは違法ではありません。
「退職の意思が固まっているにも関わらず、それを受け入れない」というのが違法なのです。
なるべく会社にいてほしい、迷っているようなら残る選択をしてほしい、という旨の会社側の意思を社員に伝えるのは普通のことです。
採用にも資金がかかっていますし、抜けた穴を補うための採用費もかかります。
チーム編成や将来的な人員計画にも影響するため、基本的には一定の引き止めはあるものだと考えておきましょう。
仕事を辞めさせてくれないトラブルはどのくらいあるの?
厚生労働省は全国の労働局と労働基準監督署に「総合労働相談コーナー」を設け、労働者からの相談に対応しています。
総合労働相談コーナーは相談を受け、適宜関係機関に取り次ぐなどして、様々なトラブルの解決を支援しています。
自己都合退職にまつわるトラブルの件数
令和5年度の相談総数121万件あり、そのうち労働基準法違反の可能性がある19万件が労働基準監督署に取り次ぎされています。
民事上の個別労働紛争の相談案件となったのは26万件で、その相談内容の上位内訳は以下の通りです。
【民事上の個別労働関係紛争相談 31万4,049件】
いじめ・嫌がらせ | 60,125件 |
自己都合退職 | 42,472件 |
解雇 | 32,944件 |
労働条件の引き下げ | 30,234件 |
退職勧奨 | 25,234件 |
その他 | 123,040件 |
参考:厚生労働省「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」
全てが退職引き止めによるものではないかもしれませんが、自己都合退職にからんだトラブルの相談が2番目に多いことが分かります。
自己都合退職にまつわるトラブルの解決事例
同資料には、実際のトラブルの解決事例も掲載されているので紹介します。
事例 | 自己都合退職に関する助言・指導 |
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事案の概要 | 申出人(正社員)は、事業主に翌月末で退職する意思を伝えたが、就業規則では3か月前の申出が必要であり、申出人が退職するのであれば、3か月後になると回答された。また、有給休暇の取得にも制限があり、退職希望日までの有休消化が認められないルールになっていた。申出人は、希望日の退職と有給休暇の取得を認めて欲しいとして、助言・指導を申し出たもの。 |
助言・指導の 内容・結果 |
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引用:厚生労働省「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」
このように労働相談コーナーに相談すれば、企業への助言・指導をしてもらえるため、速やかな解決が図られるでしょう。
もし、助言や指導では解決しない場合は「紛争調整委員会によるあっせん」が行われ、公正なジャッジがなされます。
このように適切な機関に相談することにより、違法な退職引き止めの問題は解決します。
ただ、かなりの労力とストレスがかかることは間違いありません。
やはり、円満退職に向けて努力することが大切なようです。
まずは円満退職をめざそう
まずは、円満に退職するための方法やいくつかの考え方をお伝えします。
転職による退職に後ろめたい感情をもってしまう人への対処法は、以下の記事で詳しく解説していますので合わせてお読みください。
退職意思の伝え方や態度で角が立たないようにする
なるべく1ヶ月以上前に退職の意思を伝えましょう。
退職までの期間が長ければそれだけ引継ぎ期間を取れますし、有給休暇の消化ができるだけの余裕ももてます。
「もう辞めるからどうでもいい」と思うかもしれませんが、意外と業界は狭いものです。
辞めたあとも関係性が続くこともあるし、今の上司が転職してきて転職先の上司になる、というケースもあり得るでしょう。
業界や職種を変える場合でも近隣業界や近隣職種になりがちですし、全く違う業界に転職したはずが、思わぬ取引があったというケースもあります。
少なくとも、離職票や源泉徴収などの資料を受け取るまでは現職との関係性は続きます。
なるべく丁寧かつ角が立たないような言い方で、退職の意思を伝えることがおすすめです。
むしろ角が立つような言い方で波風を起こしてしまい、噂が広がって転職先に悪影響を及ぼしてしまうことこそ避けるべきでしょう。
引継ぎのスケジュールを立てて合意してもらう
チーム内での引継ぎは、上長と一緒にスケジュールを立てるようにしましょう。
現代において、1人だけで全ての仕事を行うことはほとんどないはずです。
仮に作業自体は1人で行うとしても、それを誰かに共有したり、後工程に誰かがいたりする場合がほとんどではないでしょうか。
業務の引継ぎに関するスケジュールを立てて、合意してもらうようにすれば上長やチームにとっても波風は立ちにくくなります。
辞めるまでの期間を明確にする
有給休暇の消化をしたい場合やいつから次の所で働き始めるのかなど、辞めるまでの残り在籍期間を明確にしましょう。
場合によっては、業務を引き継いだ後だったとしても、有給休暇の消化期間中に何か連絡があるかもしれません。
ここまで有給休暇の消化や業務引継ぎの連携がなされていれば、基本的には円満退職に向けて進んでいると考えて良いでしょう。
それでも連絡が来るとしたら、本当に聞かなければならない事態に陥ったと考えるのが普通です。
決してあなたを困らせようとしているわけではありません。
可能であれば対処してあげるというのも、円満退職のための秘訣ではないでしょうか。
繁忙期の退職は避けたほうが無難
会社側が社員の退職を受け入れないのは違法ですが、社員に対して会社側から「お願い」されることはありますし、お願いすること自体は違法ではありません。
例えば、退職は受け入れるが、繁忙期の間は待ってほしい、といったケースです。
その場合は会社側にも妥当性が認められるのです。
同様に、有給休暇の取得は社員側の権利ですが、繁忙期に重なることを理由として休暇の日付を変えるお願いをするのは会社側にも認められています。
退職に際して、会社側はあなたを困らせようとして引き止めをしているわけではないですし、退職者もあえて会社が困るような期日を選ぶ道理もないわけです。
ある程度は会社側の都合も汲み取ったほうが、結果的に円満に退職できるでしょう。
その他、一般的に円満に退職するための基礎知識について知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。
会社が仕事を辞めさせてくれない理由とは
人手不足で辞められると業務に支障が出る
単純に辞められると人手が足りなくなり、業務が回らなくなってしまうため引き止めるケースです。
また、採用に関わるコストをかけたくないため、引き止める場合もあります。
辞めることは了承しても「後任が決まるまで辞めないでくれ」と交渉されることもあるようです。
しかし、転職活動に支障が出るため、可能な限り交渉に応じることは避けましょう。
あくまで人手不足は、会社が解決すべき問題です。
離職率を上げたくない
企業としての外面的な体裁を気にして、離職率を上げたくないと考えているケースもあります。
離職率が高いことは、応募者にとって警戒を強める要素になってしまいます。
採用しづらくなる問題や、企業のイメージダウンを避けたくて、退職引き止めを行っている場合もあるのです。
上司の感情的な理由
直属の上司の感情的な理由による退職引き止めもあります。
たとえば、「これまで仕事を教えてきたのに、恩を仇で返すのか!」と憤慨するようなケースです。
また、上司自身の保身で退職を引き止めることもあります。
部下の退職は上司のマネジメント力不足という、マイナス評価を避けたいと考えるためです。
上司の個人的な感情が理由で引き止められる場合は、その上の上司や人事部門に相談するとスムーズに退職できることもあります。
それでも辞めさせてくれない場合の対処法
ここまでは、基本的に円満に退職するための方法や考え方をお伝えしてきました。
多くの場合、会社側はあなたを困らせようとして引き止めるわけではないですし、退職者もあえて会社が困るような方法で辞めるようなものではありません。
ですが残念なことに、こちらが誠意を見せた対応をしても、嫌がらせとして辞めさせないような妨害を行ってくる人もいます。
ここからは、そのような行為に対する対処法を確認していきましょう。
退職の意思はしっかりと伝える
なかなか退職させてくれないのであれば、直属の上司やできればその上の上司などにも、明確に、はっきりと退職の意思を伝えましょう。
形が残るような方法で伝えるのがベストです。
退職願いなどを送る、上司や上司の上司も交えた場で話す、データとして証拠が残るメールで送るなどの方法があります。
ここまで明確な退職の意思を見せれば、引き止め工作も意味がないことが伝わるでしょう。
直属でない上司や人事部に相談する
上司に話しても聞いてもらえない場合や、上司の上司と話をするのが難しい場合、直属ではない別の部署の上位職者や人事部に相談するのも良いでしょう。
基本的に、退職の意思が強い人を会社ぐるみで引き止めることはあまりありません。
上司一人が嫌がらせのために邪魔をするというケースが多いのではないでしょうか。
そのため関係者を増やしていったり、制度的な監視者でもある人事部に話をもっていくことで、上司一人では止められない状況を作り上げていくのです。
内容証明郵便で退職届を郵送する
一般的に退職の意思を伝える場合は「退職願い」で辞めたい意思を伝え、それが受理されたら退職が受け入れられ「退職届」を提出して退職の事実を伝えます。
しかし退職願を受理してもらえないなら、「辞めます」という意思を伝えるために、いきなり退職届を出すことになるでしょう。
問題なのは、退職届を受け取ってもらえない可能性があることです。
普通郵便での郵送や手渡しの場合は「届いていない」「受け取っていない」と言われてしまうかもしれません。
そこで、届いたことが記録として残る「内容証明郵便」で会社宛てに送付するようにすれば、確実に退職届を会社側が受け取ったという事実を残せます。
離職票を交付してくれない
離職票の交付は会社側の義務ですが、それを交付してくれないという場合もあります。
そんなときは、ハローワークに相談して督促してもらうようにしましょう。
また、様々な妨害がある場合は労働基準監督署に相談するのも良いでしょう。
基本的に、こういったものは上司個人からの「嫌がらせ」でしかありません。
会社の全体の評判や評価を落とすことにつながるため、会社側には特にメリットはないためです。
公的機関に介入してもらえば、比較的スムーズに進みます。
損害賠償や懲戒解雇の脅しは無意味
過去の失敗を理由にした損害賠償や懲戒解雇などの脅しをされるかもしれません。
ですがそれはただのハッタリで、何もできないので安心してください。
会社が事業上で負った負債や損害を、従業員個人に請求することはできないと法的に決まっているのです。
損害賠償や懲戒解雇をするには条件があり「辞めること」はその条件に当てはまりません。
あまりにも脅しが過激になるようなら、後述する労働基準監督署に相談するようにしましょう。
労働基準監督署に相談する
何か不安なことや脅しを受けたなどの不満があった場合、労働基準監督署に相談したほうがいいでしょう。
いわゆる「労基」と呼ばれる機関です。
会社に対して是正勧告などの注意を行ってくれますし、この注意が多くなるとハローワークなどに情報が伝わり「あの会社はブラック企業だ」という話が出回るようになります。
基本的に会社の信用が落ちるため、会社側としては不都合なことが多いのです。
そのため、労働基準監督署に相談するのは有効な手段であるといえるでしょう。
退職代行サービスを利用する
退職したくても退職させてくれない。
このような悩みは労働者の常でした。
そのため、そういった悩みを解消するような退職代行サービスが生まれたのです。
どうしても退職の交渉が困難になり、なおかつ金銭的に余裕があるなら、こういったサービスに一任してしまうのも手段の一つです。
退職代行などのサービスに関してもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせて確認してみてください。
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
「辞める」と伝えたなら、引き止められても残らないほうがいい
「辞めようかどうか相談したい」という時点で上司などに相談し、引き止められたのなら、その後「考え直しました」として現職に残ってもいいでしょう。
しかし「辞める」という意思をはっきりと伝えたのなら、その後に引き止められても長くは残らないほうがいいでしょう。
強い意志をもって「辞めようとした人」というレッテルは、いつまでもついて回ります。
また上司や会社側としても、辞めようとした人に対して将来的に管理職などの責任ある仕事を任せにくくなります。
もし仮に引き止められて現職に残るとしても、業務の引継ぎ期間程度にしたほうが無難です。
まとめ
仕事を辞めさせてくれないとしたら、それはほとんどの場合が違法行為です。
また、会社全体の総意ではなく、上司一個人の単なる嫌がらせという側面で行われていると考えたほうが良いでしょう。
それこそ、もし仮に会社の総意で行われているような場合であれは、すぐに労働基準監督署に相談すべきです。
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