もくじ
技術職の「設備保全」という職種は比較的、未経験から挑戦ができて、手に職もつく将来性のある職種です。
主に製造メーカーを支える重要な仕事を担う設備保全について、仕事内容や向いている人の特徴、未経験から就職する方法まで解説していきます。
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設備保全とは
設備保全とは、主に製造メーカーで、生産ラインの維持管理や不具合が起こった際の改善や対応を担う職種のことです。
技術職は、大きく分けて「研究開発」「設計開発」「生産技術」「設備保全」の4つの分野が存在しています。
研究開発 | 素材や新技術、生産に関する技術の研究を行う |
設計開発 | 「研究開発」で生まれた技術を活用した製品の設計・開発する |
生産技術 | 「設計開発」が作り出した製品を、生産ラインで量産できる仕組みを構築する |
設備保全 | 生産ラインを計画通りに運用できるよう、設備を維持管理し、不具合が起これば解決する |
設備保全は、生産技術が構築した生産ラインの運用が、正しく行われるように設備を維持管理する業務を担います。
これを怠ると、どんなに良い製品を生み出しても安定した品質で量産できず、顧客が満足する製品を届けることができません。
設備保全は、安定した生産を担保する重要な仕事なのです。
設備保全が所属することが多いメーカー系の業界が気になる方は、以下の動画をチェックしてみてください!
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
製造工程の最後を担う重要な役割
素晴らしい製品を生み出しても、製品を作る生産ラインが正しく機能しなければ、不良品を量産したりラインが停止したりしてしまいます。
場合によっては、「変な音がする」「異臭がする」など製造過程で何らかのトラブルが発生する可能性も。
発生した不具合に稼働しつづけてしまうと、大きな機会損失につながりかねません。
余計な費用がかかり、さらには大きなクレームが発生してしまうことも考えられます。
設備保全は、製造メーカーの生産力を守るうえでの、いわば「最後の砦」なのです。
設備保全と保守・メンテナンスの違い
ただ、誰が行うかでニュアンスが違ってくるようです。
設備保全と保守・メンテナンスは、機械などの設備を維持管理するという面では同じ意味の言葉と捉えても良いでしょう。
強いてニュアンスの違いを挙げるとすると以下のようになります。
- 機械などを提供しているメーカーが、顧客の導入した設備の点検・整備を行うことを「保守・メンテナンス」
- 設備を導入した企業が主体になって行う活動を「設備保全」
また、設備保全は「壊れるまえの予防」、保守・メンテナンスは「壊れた後の修理」というニュアンスで使い分けられることもあるようです。
設備保全の目的
設備保全の目的は、第一に設備の運用が止まることにより発生する損害を防ぐことです。
また適切な設備保全により、設備そのものを長持ちさせコスト低減を測ることも目的の一つです。
ここでは、以下に挙げる4つの設備保全の目的を解説します。
- 故障を予防する(ゼロにする)
- 設備を長持ちさせる
- 設備の停止を防ぐ
- 不良品を出さない
最終的には「顧客に迷惑をかけない」ことが、設備保全の大きな目的といえるでしょう。
故障を予防する(ゼロにする)
一度、設備が故障してしまうと修理のために部品を調達するなど、一定期間設備の運用が停止してしまいます。
ラインがストップしてしまうため、生産計画に大きな狂いが発生し、納期に間に合わず取引先に迷惑をかける事態を引き起こしてしまうでしょう。
また、長期間にわたり生産設備が停止した場合、その間、製品を供給することができなくなってしまいます。
本来あるべき売上が確保できないという、機会損失につながってしまうのです。
設備を長持ちさせる
生産設備の部品の多くは消耗品であり、使えば使うほど劣化・摩耗していくものです。
こうした部品を定期的・計画的に交換することが故障の予防につながります。
つまり生産設備を常に最適な状態に保つことで、より長く使うことができるのです。
耐用年数より前に使えなくなることによる、設備の再導入のためのコスト増を防げるでしょう。
設備の停止を防ぐ
大きな故障ではなくとも、設備に不具合があることにより、生産ラインが頻繁に止まるようでは、生産効率が低下してしまいます。
こうした状態では、設備停止に対処する人員を用意するなど、コスト増が発生するでしょう。
また設備が停止している間は、生産ラインに携わる人員は仕事が進められません。
時間的なロスをリカバーするための残業など、本来は必要なかったはずの人件費が発生してしまうのです。
不良品を出さない
設備の不具合があるまま生産を続けることは、不良品の発生リスクを高め、廃棄などのロスを発生させてしまいます。
万が一、欠陥品を世に出してしまった場合、回収による莫大な費用が発生するだけでなく、社会的信用を失う事態を招いてしまうのです。
製品によっては欠陥により、顧客の命や健康を害する恐れもあるでしょう。
こうした事態は、企業の存続そのものを危うくしてしまうもの。
不良品・欠陥品を出さないこと、すなわち顧客に迷惑をかけないことは、設備保全の大きな目的といえるでしょう。
設備保全の種類とは
下記の4種は、代表的な保全業務です。
- 予防保全
- 事後保全
- 予知保全
- 改良保全
どのような業務なのか、それぞれ詳しく確認していきましょう!
予防保全
予防保全とは、設備の故障が起こる前にあらかじめ対処しておく保全方法です。
定期的に設備を管理できれば、突発的な設備の停止などが起こらず、安定した生産力を発揮できます。
予防保全には、以下に示す2つの手法があります。
- 時間基準(計画)保全
- 状態基準(監視)保全
それぞれ確認していきましょう。
時間基準(計画)保全
時間基準保全または時間計画保全とは、時間を基準にした保全計画のことです。
例えば、「この部品は稼働から〇時間経過したら、壊れていなくても取り替える」といった取り組みです。
過去、〇時間稼働したら壊れたことがある、といった経験から予測して時間計画を立てます。
上記のように、部品が壊れてから場当たり的に対応するのではなく、あらかじめいつ交換するか決めておくことで、計画にない設備停止を防ぐことが可能なのです。
状態基準(監視)保全
状態基準保全または状態監視保全とは、定期的な点検を行い、壊れそうな予兆を検知したら部品を交換する手法です。
過去の経験などから「◯◯の予兆が出ると、壊れる可能性が高い」と判断したら、事前に対処を行います。
時間基準(計画)保全と異なり、定期的に部品を交換するわけではないので、部品の交換コストがかかりません。
一方で、定期点検が必要なため、点検コストがかかる特徴があります。
事後保全
事後保全とは、故障が発生してから対処する保全手法です。
事後保全も以下の2種類に分けられます。
- 緊急保全
- 計画事後保全
それぞれ確認していきましょう。
緊急保全
緊急保全とは、突発的に発生した故障・事故・不具合に対処することです。
予期できない停止であるため、すぐさま対処しなければなりません。
一見、場当たり的な対処のように感じるかもしれません。
例えば突発的に壊れる可能性がある部品を過去のデータから洗い出しておき、交換用部品を用意しておくなどの準備も含まれます。
しかし、どんなに準備や予防をしていても、突発的な故障は発生してしまうもので、トラブルをゼロにするのは不可能です。
そのため緊急保全をしやすいように準備しておき、停止によるダメージを最小限に留めることが重要です。
計画事後保全
事後保全のうち、あらかじめ「◯◯は故障が起こってから対処すると決めておく」ことを計画事後保全と呼びます。
部品交換が簡単にできる、設備の停止を最小限にできる場合は、点検コストを下げられる計画事後保全を行う場合もあるのです。
予知保全
予知保全は、「そろそろ壊れそうだ」と故障の予知を感知したら保全活動を行う方法です。
予知保全では、部品への負担のかかり方や稼働状況を加味して、部品が壊れる可能性がどの程度なのかを予測して、必要があれば対処します。
具体的には、設備の稼働状況と故障状況のデータを蓄積し、過去データを分析して予知を行う手法です。
近年はAIによる分析もできるようになってきたため発展した、比較的新しい保全手法でもあります。
例えば、時間基準(計画)保全の場合、壊れていない部品を定期的に交換するため、壊れるまで使ったときと比べて部品のコストが余分にかかってしまうでしょう。
また、もしかすると前回の稼働よりも大幅に設備が稼働しており、今までの予測よりも早く部品が壊れてしまう可能性もあります。
予知保全は、データを蓄積するシステムと分析が必要になるものの、無駄に部品交換を続けたり、思わぬオーバーワークで部品が壊れて設備を止めてしまう可能性を低くできる点が優れているのです。
改良保全
改良保全は、何か不具合が起こったときに対処しやすくしたり、定期的な点検などをしやすくしたりして、保全しやすい設備を構築することです。
負荷がかかりやすい部品の構造を変えて壊れにくくしたり、工程を見直して負荷がかかる頻度を減らしたりといった手法がとられます。
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
保全機会を減らす「保全予防」も!
保全予防は、設備の設計・構築時点で、故障したり事故が発生したりする機会を減らせるように保全性の高い環境を作ります。
「壊れたら対処する」「壊れる前に対処する」のではなく、「そもそも壊れにくい設備を設計・構築できる」ようアプローチを行います。
設備保全の仕事の年収例
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」から、設備保全の仕事の年代別年収例を見てみましょう。
jobtagで「設備保全」と検索すると「物流設備管理・保全」「紡績設備管理・保全」「産業用ロボットの保守・メンテナンス」が出てきます。
これらの仕事が属する職業分類は「はん用・生産用・業務用機械器具整備・修理工」となり、この分類の年収データは以下の通りです。
ピークとなる55~59歳の層で、平均年収626.84万円と決して低くない水準であることが分かるでしょう。
【職業分類(はん用・生産用・業務用機械器具整備・修理工)平均年収】(単位:万円)
年齢 | 職業分類(はん用・生産用・業務用機械器具整備・修理工) |
---|---|
20~24歳 | 354.43 |
25~29歳 | 438.64 |
30~34歳 | 496.64 |
35~39歳 | 525.47 |
40~44歳 | 605.63 |
45~49歳 | 580.87 |
50~54歳 | 583.99 |
55~59歳 | 626.84 |
60~64歳 | 426.71 |
参考:厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag 物流設備管理・保全」
参考:厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag 紡織設備管理・保全」
参考:厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag 産業用ロボットの保守・メンテナンス」
設備保全に向いている人の特徴は?
設備保全に向いている人の特徴について解説していきます。
責任感がある人
設備保全を担うにあたって、もっとも大切な要素は責任感があることです。
設備保全は、設備の生産性や安全性を左右する重要な業務です。
様々な故障を予期して対応策を打ちつつ、いざ故障が発生すれば緊急保全を行います。
緊急対応であれ予防の対応であれ、設備保全が動かなければ設備が止まったままになったり、トラブルが頻発したりしてしまいます。
そのため、責任感をもって仕事をできることは大切な特徴なのです。
小さな変化に気づける人
小さな変化に気づく能力も設備保全を行ううえで大切です。
特に予防保全などの点検の際には、マニュアルなどを確認しながら細かい仕様をチェックすることになります。
そのためマニュアルに示された異変はもちろん、それ以外の小さな変化にも気づける力は重要です。
誰もが見落としてしまうような小さな違和感や設備の異変に気づければ、それだけ故障を予防できる可能性も高まり、設備保全として活躍できるでしょう。
課題解決力がある人
設備保全が故障などのトラブルを解決しなければ、設備は止まったままになり生産性が下がってしまいます。
設備保全は、発生した問題への対処はもちろん、発生する可能性のある問題まで視野を広げて、先回りした対策を講じる力も必要となる仕事です。
ルーティンワークが苦にならない人
故障や不具合が起こったときに活躍する設備保全ですが、実は、故障が起こり、それに対応する機会はそう多くありません。
そのため設備保全は、突発的に故障しないように定期点検する業務が中心となります。
そのため業務はルーティンワークとなる場合も多いでしょう。
そしてもちろん、毎日「点検→OK」の繰り返しだったとしても、1回1回のチェックを疎かにすることはできません。
すなわち、決められたルーティンワークを繰り返しながらも、常に同じ緊張感とチェック精度を維持しなければならないのです。
そのため、毎日同じような仕事を続けても苦にならないことは、重要な要素の一つです。
未経験から設備保全になるには
未経験から設備保全に就く方法を解説していきます。
未経験からでもなれるが有利・不利はある
設備保全の仕事は、未経験からでも挑戦できます!
基本的には、学部で理工系を専攻していた人のほうが有利にはなりますが、文系専攻でもチャンスがある職種です。
また未経験であっても、理工系・文系などの専攻に関係なく、前職やアルバイト・趣味などで車の整備を行っていた、機械に触っていたなどの経験があれば面接でのアピールポイントになります。
設備保全に近しい職種からスタートする
設備保全は募集人数が少なく、採用数がそれほど多くありません。
そのため、設備保全よりも多くの人員を募集している製造オペレーターなど、生産ラインで実際に手を動かす仕事からスタートしてみるのも手段の一つです。
業界や業務をある程度経験した状態であれば、設備保全へのキャリアチェンジも狙いやすくなります。
未経験歓迎の求人を探す
未経験歓迎の求人を探して、応募するようにしましょう!
ただし「未経験でいきなり設備保全ができる」ことは少なく、基礎を身につけるための社内教育からスタートすることがほとんどです。
会社によっては、まずは製造ポジションからはじまり、その後設備保全へ進む流れを想定している場合もあります。
すぐに設備保全に関わることはできないにしても、特に若いうちであれば、着実にキャリアを積み上げることで望む仕事にチャレンジできる可能性が高いので、未経験歓迎の求人を狙ってみるのも良いでしょう。
資格を取得する
設備保全に就くうえで資格は必須ではありませんが、何かしら学んでおくことで、選考で有利になる可能性があります。
また設備保全として働く際にも役立つので、資格取得を目指してみるのも方法の一つです。
機械保全技能士
械械保全技能士とは、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が提供している、機械保全に関する試験です。
国家資格でもあるため、信頼性が高い特徴があります。
3級の受験には実務経験が問われないため、未経験の場合は3級から挑戦してみましょう。
参考:公益社団法人日本プラントメンテナンス協会「機械保全技能検定」
電気工事士
電気工事士という国家資格も設備保全をするにあたって役立つ資格の一つです。
一定以上の規模の電気設備に関わる工事や作業を行うためには、資格を有していることが法的に定められています。
そのため工場で電気設備に関する設備保全を行うには、電気工事士の資格を取得していなければならないことがあるのです。
第一種と第二種があり、それぞれできる電気工事の範囲が異なります。
参考:一般財団法人電気技術者試験センター「電気工事士って何だろう?」
電気主任技術者
電気主任技術者も国家資格で、電気工事士よりもさらに広い範囲の電気設備に関する保安業務ができるようになります。
発電所や変電所、工場や大きなビルなども請け負うことが可能です。
また、電気設備を設けている事業主は、電気主任技術者を保安の監督者として専任しなければならないことが義務付けられており、社会的信頼も高い資格といえます。
参考:一般財団法人電気技術者試験センター「電気主任技術者って何だろう?」
まとめ
生産性を維持するだけでなく、いざ問題が起こったときに解決する、重要な役割を担う設備保全。
ルーティンワークが多いためワークライフバランスを保つこともできますが、いざ不具合が発生すれば課題解決力や技術的な知識を駆使して活躍できます。
そのため責任ある職務を任されたい、という方にもおすすめの仕事です。
- 設備保全向けの選考対策がしたい
- 設備保全になるためのキャリアプランを考えたい
- そもそも自分が設備保全に向いているか確認したい
上記に当てはまる方は、UZUZのエージェントにご相談ください。
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少しでも気になった方は、お気軽に相談してみてくださいね!
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