世の中には様々な業界があり、コンサル業界もその中の一つです。しかし「コンサルタント」という職種を耳にしたことがあっても、多くの方は具体的な業務まで理解されていないのではないでしょうか?私も今はIoTコンサルタントとして働いていますが、実は入社前までコンサルタントが何をする仕事なのか、あまり理解していませんでした。
そこで今回は、現役コンサルタントが実際の仕事内容や仕事の進め方について紹介していきたいと思います。「コンサルって何?」「業界研究の参考にしたい!」という方は是非チェックしてみてください。
「コンサルタント」って何してるの?
一般的には上記画像のように「年収が高い」「高学歴」「忙しい」このようなイメージだと思います。今回は、コンサルタント業界への就職・転職を考えている方に向けて、もう少し具体的な業務内容をIoTコンサルのケースを例に挙げてお伝えしたいと思います。
コンサルの主な業務内容
IoTに関するコンサル案件の場合、大きく3つのステップに分かれます。
IoTコンサルの仕事①:ビジネス企画
IoTに関する相談で最も多いのが「今の課題をIoTで解決できないか?」という内容です。この悩みに対して、新しいビジネスアイディアを創出し、企画書に落とし込むところまで支援します。
このステップは基本的に議論が中心であり、現況の課題の整理・市場調査・関連技術の調査・ターゲットの特定・顧客価値の具体化・収支の計算など、約3ヶ月〜6ヶ月にわたって決めていきます。
コンサルタントは、毎週または隔週に開催されるワークショップに向けて資料を作成し、当日はファシリテーション(会議を仕切って結論まで導くこと)を行うことがメインの仕事となります。
参考元:参考:日本ファシリテーション協会
IoTコンサルの仕事②:PoC(実証実験)
新規ビジネスの企画書が完成したら、次に行うのは「本当にそのサービスに価値があるか?」ということの実証です。システム開発が必要なサービスは億単位の費用が発生するため、まずはコンパクトに開発を行い、簡易的なシステムを実際に使ってみて検証します。これを「PoC(Proof of Concept)」と呼びます。
このステップではクライアントとのワークショップも行いますが、それだけではありません。ビジネスを前に進めるために、PoCに協力してくれる顧客の開拓や、プロトタイプ開発に向けた他社技術の調査・調達など、2社で検討を進めていた内容が徐々に3社、4社と広がっていきます。そのためにコンサルタントの役割も幅広くなっていきます。
IoTコンサルの仕事③:システム開発・業務開発
PoCを経て「本サービスに価値がある(儲かる)」という結果が得られた場合、商用化に向けて開発を進めることになります。
開発は大きく2つの観点で進める必要があり、1つ目は「システム開発」ですが、コンサルタントが力を発揮するのは2つ目の「業務開発」です。業務開発とは、新しいビジネスを運用するにあたって新たに発生する業務を定義し、運用できるように手順と担当を明確にする業務です。
下記が業務フロー図の例です。UZUZのような人材紹介会社の営業活動を参考に考えてみます。
まず、営業・サポートデスク・法務など、業務を大きくカテゴライズし、担当を定義します。これを「アクター」と呼びます。組織で言えば“部署”を決めるようなものと思ってください。この時、システムを利用する場合はその機能についても記載します。これはどのような時にどのようにシステムを利用するか「シナリオ」を明確にするためです。
アクターが決まったら、新規事業を運用する上で必要な業務を徹底的に洗い出し、それを細かい手順に落とし込みます。業務フローを作成する際には、上の図のように何の作業を行ったら、次に何の作業を行う必要があるのか、流れを明確にすることが重要です。
既にある業務を業務フロー図に落とし込むことは容易かもしれませんが、まだ成立していないビジネスを運用するための業務・手順を考えることは、もはや“想像の世界”です。しかしこれがなければビジネスを開始できず、かつシステムの機能も不明確なまま開発を進めることになってしまうため、非常に重要な仕事です。
この記事では、IoTコンサル業務の中でも案件数の多い「①ビジネス企画」について、もう少し詳しく書いていこうと思います。
ビジネス企画の進め方
わかりやすいように、IoTから離れて考えてみましょう。もしあなたが新しくカフェを開くとしたら、まず何を考えますか?
立地・コンセプト・ターゲット・マーケティング・メニュー・コスト……など、なんだか無限に考えるべき項目が出てきそうですね。しかし、考えているだけではいつまでたってもカフェを開くことができません。
そこで、最初に目的を達成するため(課題を解決するため)に決めなければならない項目の枠組みを決めます。これを「フレームワーク」と呼びます。ビジネス企画を検討する上で有名なフレームワークが、下記の「ビジネスモデルキャンバス」です。
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネス企画を進める上で検討すべき項目を9つのジャンルに分けたフレームワークです。詳細は「ビジネスモデルキャンバスとは? 9つの視点で貴方のビジネスプランを丸裸に!」を見てください。
定期的にワークショップを開催し、クライアントとの議論の上各項目について決定していきます。その際の討議資料を作成することが、コンサルタントの主な業務内容になります。
では、どこから決めていきましょうか?ターゲット?提供価値?パートナー?はっきり言って、カフェが成功するのであれば、どの項目から決めても問題ありません。ただし、コンサルとして「なんでもいい」は通用しません。
コンサルタントは常に「複数ある選択肢の中で最適なものはどれか」という解を求められます。それを決めるために「論点(結論に導くための判断基準)」を整理し、比較検討した上で決定していきます。
ビジネスモデルキャンバスにおける各項目について決める場合も同様です。例えば、これから開くカフェが提供する価値について検討するとしましょう。
- 新しい体験を提供する
- とにかく安いコーヒーを提供する
- 充実したメニューを提供する
など、色々と考えられると思います。しかしコンサルタントとして、どの選択肢が最も適切か結論を出さなければなりません。
そのために、コンサルタントは競合の事例の調査、カフェ利用者が抱える悩みの調査、解決策の案出しなど、徹底的に行った上で資料(パワーポイントで50枚〜100枚程度)を作成し、ワークショップに臨みます。それを毎週行うわけですから、激務になるのも頷けるのではないでしょうか?
コンサルタントは未来を占う「占い師」のような仕事
日々業務を行う中で、コンサルタントは「占い師」のような仕事であると感じます。なぜなら、コンサルタントは今は見えない(わからない)未来のことについて結論を出さなければならないからです。
もちろん、実際にはどのような未来になるかはコンサルタントにはわかりません。そのため、今調べられるあらゆる情報を収集し、その上で「こうなるはずだ」と仮説をたてます。つまり、未来を予測するスキルがなければ(精度が低ければ)、もはやただの“嘘つき”と一緒です。
コンサルタントとして、“当たる占い師”になるか、もしくは“嘘つき”になってしまうかは紙一重です。そこで、次回は「占い師(コンサルタント)になるための適性」について書きたいと思います。