損害保険業界最大の特徴:三つの企業が業界を占めている
損害保険業界の保険料収入は、現在3社が他社を圧倒しています。その3社とは、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディング、損保ジャパン日本興亜ホールディングスの3つです。
保険料収入ランキング上位3社の保険料収入が、いずれも3兆円を超えているのに対して、保険料収入ランキング4位のトーア再保険の保険料収入は、わずか2,000億円にすぎません。業界全体の保険料収入の約90%は、上位3社で占めています。力関係が非常にハッキリしている業界、ということができるでしょう。それでは、損害保険業界の上位3社の特色をそれぞれ見ていきます。
東京海上ホールディングス
三菱グループに属する企業です。2002年に上場しています。元々は東京海上火災保険という企業と、みずほグループであった日動火災海上保険、朝日生命保険が経営統合することで成立した企業です。2007年にイギリスの保険グループであるキルン社を買収したのをはじめとして、海外の保険会社をいくつも買収していることも大きな特徴です。つまり、買収や合併によって、どんどん大きくなっていった企業です。
会社設立時期:2002年
・資本金:1,500億円
・売上高:約4兆1,600億円
・総資産:約18兆9,400億円
・従業員数:約33,000人
MS&ADインシュアランスグループホールディング
2010年にあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険、三井住友海上グループホールディングスの3つの会社が経営統合をして生まれました。その後、2011年にも、三井住友海上きらめき生命保険とあいおい生命保険も吸収しています。
そのため生命保険も扱う、損害保険会社です。また、メットライフ生命保険などの子会社がたくさんあるのも、大きな特徴です。・会社設立時期:2008年
・資本金:1,000億円
・売上高:約3兆4,000億円
・総資産:約11兆4,400億円
・従業員数:約21,000人
損保ジャパン日本興亜ホールディングス
損保ジャパン日本興亜ホールディングスは、株式会社損害保険ジャパンと日本興亜損害保険株式会社が、2010年に経営統合した会社です。当時の名前は、NKSJホールディングスでしたが、2014年9月に社名変更をしています。またグループの正式な略称として、SOMPOホールディングと呼ばれることもあります。
・会社設立時期:2010年
・資本金:1,000億円
・売上高:約3兆2,800億円
・総資産:約1兆8,300億円
・従業員数:約36,000人
その他の損害保険会社
いわゆる三大メガ損保が、先程紹介した東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディング、損保ジャパン日本興亜ホールディングスです。もちろんこの三大メガ損保以外にも、損害保険会社はあります。
トーア再保険、共栄火災海上保険や、ソニーフィナンシャルHDの損害保険事業、セコムの保険事業がこれにあたります。ただし保険料収入という点では上位3社には遠くおよびません。売上ランキング4位のトーア再保険で約2,000億円、5位の共栄火災海上保険が約1,600億円です。その他の損害保険会社の保険料収入は1,000億円以下になってしまいます。やはり、三大メガ損保と他の損害保険会社では分けて考える必要があるようです。
補足:何故損害保険会社では、多くの吸収合併が行われるのか?
三大損保は、いずれも吸収合併をいくつもしながら、大きくなっていきました。すると、ここで1つの疑問が浮かびます。
何故、損害保険会社は、そう何度も吸収合併を行うのか?
この疑問にお答えしましょう。先程も述べた通りに、国内の損害保険業界は既に成熟化しています。そのため、単独企業の力だけでは、業績を伸ばすのが困難だからです。数年、数十年先を見据えて、業界で生き残っていくためには、複数の企業が協力して経営していく方が、はるかに効率が良くなります。
特筆したいのは、大幅なコストダウンが見込めることです。たとえば、3社が経営統合したとしましょう。3社では、それぞれ別のシステムで運営していました。これらのシステムを統一化すれば、単純にシステムコストが削減できます。また、管理に要する人数も減らせます。
他には、三大損保がそれぞれ業界ナンバーワンを狙っていることも理由の1つです。これは損害保険業界に限らない話ですが、業界シェアナンバーワンは、どの企業も目指したいのが本音です。そのため、吸収合併や経営統合を繰り返し、会社を大きくしていきます。