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【プラモデル業界への就職Vol.1】動向とメーカー解説~バンダイ・タミヤ・東京マルイ~
企業によって作る商材が綺麗に住み分けされているのがこの業界の特徴です。キャラクタープラモデルのバンダイ、戦車のタミヤ、飛行機のハセガワ、車のフジミ、可動フィギュアのマックスファクトリー等。それぞれが1つの商品に特化していくことで独自のノウハウを蓄積しており、どれをとっても世界一のレベルといえます。
2.業界動向
各企業の商材を全国の小売店に卸すのが、模型問屋です。この業界の場合、東京の蔵前を中心に模型問屋が軒を連ねており、プラモデル製品はほぼ全てが一度この地に集まってから全国の小売店に卸されます。
蔵前は元々人形問屋だった企業が多く存在し、おもちゃや模型を取り扱い始めたのが今の模型問屋になっています。特に模型問屋最大手の宮沢模型はバンダイと程近い場所に本社を構えており、ほぼ全ジャンルの商材を取り扱っている為、小売店なら間違いなく取引している企業になっています。
2-1.国内市場
娯楽が多様化したこともあり国内市場は縮小傾向にあります。実店舗を持つ個人経営の小売店はここ10年で約8割が閉店に追い込まれてしまいました。単純に顧客の減少によって需要が減ったことや経営者の高齢化などが要因として考えられますが、それ以上に家電量販店がプラモデルを取り扱い始めた事と、ネットショップの台頭が主な要因と言えます。
見事にスマホの普及率と反比例するように実店舗が閉店しており、スマホで簡単に購入できてしまうネットショップの台頭は大きな影響を与えています。筆者も実店舗で働いていたことがありますが、店頭で商品選びをし、欲しい商品が決まったら店頭の値段を確認してすぐにその場でスマホを使って安いネットショップで購入する方を多く見てきました。
ネットショップが利用する倉庫は実店舗を持つよりもコストが低く、沢山の在庫を抱えることができます。問屋との交渉などで大量に仕入れる代わりに卸値を通常よりも安く仕入れることができます。つまり薄利多売で利益を得ているのです。問屋からの卸値が60%~65%のプラモデルは人件費や店舗維持を考え定価の80%前後で販売するのが一般的です。
しかし、安く大量に商品を仕入れることでコストを抑えているネットショップでは定価の70%で販売するのがあたりまえになっており、2000円のプラモデルなら80%と70%では200円もの差が出てしまいます。
またアマゾンが展開する送料無料・翌日配送サービスも大きな要因です。景気が上向いてきているとは言え、消費者の節約志向は未だに頑なで、仕事が忙しくて実店舗に寄る余裕も少ない方にとってはネットショップはとても好都合なのです。
問屋としても小額の個人小売店よりも毎回の仕入れで大量に購入してくれるネットショップに希少な新製品を優先的に卸すようになってしまうのはどこの業界でも同じことが言えると思います。そういった背景もあり、販売力に乏しい個人経営の実店舗はどんどん閉店しているのが現状です。
大きなチェーン店はかろうじて生き残ってはいますが、非常に厳しい状況にあると言えます。小売店が減っている現状をメーカーも把握しており、販売チャンネルが減ることは最終的にメーカーの首を絞めることに直結すると考えたバンダイは規模の小さな小売店専用の商品などを作って小売店にアドバンテージを持たせましたが、効果は現れずに今はそういった対策をやめてしまっています。
かつては生鮮食料品を町の商店街の個人店で買っていたのが、今では当たり前にスーパーマーケットやネットネットショップで買うようになったように、プラモデル業界もそのような過渡期にあるといえるのです。顧客の減少、小売店の弱体化と負の要素が多くなっているのもあり、昔よりもどこか閉鎖的で寂しい空気感が漂っているのは間違いなくほとんどの業界人が肌で感じています。
2-2.海外市場
海外にも多くの模型メーカーがあり、特に中国のトランペッターとドラゴンモデルズというメーカーがスケールモデルジャンルで勢いを強めています。1ヶ月に1つのペースで戦車のプラモデルを商品化しており、日本に多く輸入されていて、今では日本のプラモデルファンの中でも一定の認知度があります。
この商品化スピードには日本のメーカーも敵わず、プラモデルと言えば日本というイメージが崩れてしまうのではないかという懸念がファンの中で漂いつつあります。ヨーロッパではドイツのレベルというメーカーが老舗として世界中で知られています。品質が世界一の日本でもレベル製品は高く評価されている為、人気のモデルはハセガワが代理店となって日本国内でも購入することができます。
キャラクタープラモデルの分野では国内市場の需要が頭打ち状態にある為、にバンダイはアジア一部の地域への輸出に力を入れています。最近では香港やシンガポールでの需要が高まっており、ガンプラの世界大会が開かれるほどにまで市場が成長してきました。
この辺りではプラモデル作りは時間に余裕のある高所得者の高級な趣味としての認識があり、ユーザーの購買力も高く、更にこれから需要が広がることが期待されている地域です。
海外では国内の約3倍の値段でプラモデルが販売されている為、特に中国人の旅行者などは日本国内でプラモデルを爆買いすることも多く、秋葉原では紙袋一杯にプラモデルを詰めた旅行者などをよく見かけるようになりました。
2-3.最近のトレンド
プラモデルは元来、動かして遊ぶことを前提として作られていませんでしたが、最近は可動に力を入れる傾向にあります。特にバンダイのガンプラでは、ABSなどの強化プラスチックを多用して極少ヒンジなどで、人間の関節と同じように動くことが商品の売りになってきています。作ることがプラモデルの本来の楽しみ方でしたが、完成後に動かして遊ぶことへシフトしていきているようです。
また1/12可動フィギュアの需要が伸びており、プラモデルメーカーとしてフィギュアと併せて遊ぶことの出来る小物などの商品開発に力を入れています。例えば学校の机や駅の改札、ゴミ箱などの小物アイテムが人気を集めています。スケールモデルやキャラクターモデルよりも簡単に短時間で製品化できる為、毎月のようにラインナップが増えています。
2-4.今後の展開
中国の新興スケールモデルメーカーの日本市場参入がどんどん加速していくことが予想されます。既に頭打ち状態にある日本市場でユーザーが海外メーカーに獲得されてしまうことで年間の商品リリース数が少ない日本メーカーがますます厳しい状況に立たされる可能性があります。
キャラクタープラモデルに関してはバンダイの独壇場はまだまだ続くと思います。これはスケールモデルとは違い、可動するキャラクターモデルでは技術のレベルが異なるからです。難しい技術とノウハウを必要とするキャラクターモデルはバンダイ独自のもので、スケールモデルよりも初期投資が高くつく為、中国の新興メーカーが手を出しづらいジャンルなのです。
先手を打って早い段階から海外に輸出しているバンダイの磐石な状態は簡単に崩れないと考えられます。またキラーコンテンツであるガンダムの製品を作れる唯一の企業という点も大きな要因です。
増加傾向にあるアニメファンを相手とする国内のフィギュアメーカーは今後もアニメに登場するフィギュアの商品化に注力し、さらなる市場開拓に邁進すると思います。アニメ自体が廃れることがなければフィギュアメーカーも生き残り続けるのでそういった意味ではフィギュアを主な商材としているメーカーは安泰と言えます。
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