積算業務という仕事は、耳慣れない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、積算業務とはどんな仕事なのか、どんな資格があると活かせるのか、さらにどんな人が向いているのかなど、詳しく解説していきます。
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積算業務とは?
積算業務とは、「建築などの工事にかかる費用を計算する」仕事。
建築工事には、数千万〜数億単位まで莫大な費用が発生することがほとんどです。
しかも、工事期間も数か月〜年単位まで、長期間かけて行うことも多々あります。
そのため工期や顧客の予算を鑑みながら、建築に必要な材料費、現場で建築を行う人件費など、工事にかかるあらゆる費用を算出する積算業務という仕事は、建築業界において欠かせない専門業務の一つなのです。
もちろん積算を行うのは大規模な工事ばかりではありません。
スケールの小さい建築や短工期の簡単な工事もありますが、担当業務の規模問わず、工事全体にかかる費用を算出し、施工主と交渉を行い、自社の利益を確保する重要な仕事であることに変わりはありません。
デスクワーク中心であるため、「体力に自信がないけど建築業界が気になる……!」という方には、挑戦しがいのあるお仕事ではないでしょうか。
建築業界の他の職種も気になる方は、以下記事も読んでみてください。
積算業務の具体的な仕事内容は?
積算業務の仕事は、大まかに以下3つに分類できます。
- 人件費・材料費・工事費を算出する
- 工事費用の決定と資料作成
- 価格の交渉や提案
それぞれ確認していきましょう。
1.人件費・材料費・工事費を算出する
まず“積算”という言葉通り、「費用を計算し、積み上げる」役割を担います。
具体的には下記の通り、図面を確認しながら各種予算を算出します。
- 設計書や図面から必要な材料や数量・人員数・工法などを読み取る
- 具体的な費用を積み上げる(工事に必要な人件費、材料費、工事費など)
積算業務の根幹を担うのが、上記の費用の算出です。
また正確な予算を算出するため、必要に応じて実際の現場に赴いて調査を実施することもあるでしょう。
それほど積算業務では、正確性が非常に重要。
予算内に収めることはもちろん、赤字を出さないよう適正に費用を算出する力が求められます。
2.工事費用の決定と資料作成
工事全体の費用を算出したら、具体的な「工事費用の決定」と「費用を提案するための資料作成」に取り掛かります。
費用を決定する際には施工主の要望と会社の利益を鑑みて、双方が納得する工事費用になるよう調整を行いましょう。
その後、施工主に工事費用の提案を行うのも積算業務の一つ。
分かりやすく伝えられるよう資料作成を行っていきます。
3.価格の交渉や提案
作成した工事費用の資料をもとに、施工主に金額の提示を行い交渉していきます。
予算をオーバーしてしまう場合は、費用を抑えられる工法の提案や相談なども必要に応じて行っていきます。
上記からもわかる通り、積算業務では見積もりが作成できることはもちろん、建築の知識やコミュニケーション力も必要です。
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
多様な能力を身につけられるのが積算業務!
積算業務では、計算能力、事務能力、交渉力(コミュニケーション力)、豊富な建築知識など、様々なスキルが必要です。
「難しそう」と感じてしまった方もいるかもしれませんが、裏を返せば、積算業務に就くことで多種多様な能力を身につけ、スキルアップできる機会を多く得られるということ。
積算業務は、多様な能力を身につけ発揮できる場であると同時に、建築業界をはじめ様々な環境で活躍できる能力を磨ける場でもあるのです。
積算業務で活かせる資格を紹介
様々なスキル能力が必要な積算業務。
ここからは、積算業務で活かせる資格について解説していきます。
建築士
建築士は建築士法に定められた国家資格であり、建築における設計や工事監理の専門家です。
建築士は建築物に関する構造・安全性・設備に関して熟知している必要があります。
そのため、その建築に関する豊富な知識は積算業務における見積もり業務や提案に大いに活かせるのです。
ここでは、一級建築士と二級建築士について知っておきましょう。
一級建築士
一級建築士は国土交通省から認可を受ける資格であり、制限なく大規模な建築物を設計・工事監理などができます。
大きな建築物の施工や工事は厳しい安全基準が設けられており、大きな事故を防ぐため特定の資格を持っている人でなければ扱えないよう法律で定められています。
ただし、様々な資格のなかでも特に難易度が高いとされていて、実務経験なくして取得することはできません。
参考:国土交通省「一級建築士について」
二級建築士
二級建築士は、都道府県知事から認可を受ける国家資格で、戸建て住宅などの中小規模の建造物を扱うことができます。
一級建築士と比べ扱える範囲は狭くなりますが、戸建て規模であれば木造・鉄骨・鉄筋コンクリートなどの様々な材質を扱えます。
一級建築士ほどではないものの、ある程度の建築技術や設計に関する知見が求められる資格です。
そのため二級建築士の取得で培った建築知識は、積算業務における人件費・材料費・工事費の算出の際に役立ちます。
二級建築士をもっていれば一級建築士を受ける際の受験資格も緩和されるため、建築業界に関わるなら取得を考えても損はない資格です。
参考:建築資料研究社「2級建築士の資格・試験ガイド」
建築積算士補・建築積算士
建築積算士補と建築積算士は、積算業務の専門の資格です。
民間の資格ではあるものの、とくに建築積算士の資格は、国土交通省が有資格者が会社に何人在籍しているか評価対象にするなど、公的機関からも評価を受けている資格でもあります。
レベルとしては、「建築積算士補」→「建築積算士」という順となり、まずは建築積算士補を目指すのが一般的です(取得すると建築積算士の受験条件も緩和されます)。
ちなみに建築積算士の合格率は6割程度から、低い時には4割程度であり、難易度は比較的高いと考えられるでしょう。
本格的に建築積算士を目指すなら、まず建築積算士補の取得を目指してみましょう。
参考:公益社団法人日本建築積算協会「建築積算士制度の概要」
建築コスト管理士
建築コスト管理士も積算業務向けの資格で、コストマネジメント業務の専門知識に特化しています。
設計初期から工事完了後までを見据えて関わるため、キャリアアップにもつながりやすい資格です。
建築コスト管理士の合格率も6割程度となっています。
参考:公益社団法人日本建築積算協会「建築コスト管理士制度の概要」
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
建築業界で重宝される資格を目指せる
積算業務で活かせる資格は、ほかの建築業界の仕事でも役に立ちます。
積算業務のプロフェッショナルになったうえで設計士や施工管理などの職務に移りたいなら、建築積算士や建築コスト管理士の資格がおすすめです。
これらの資格をもっていれば積算業務のスキルが十分であることの証明になりますし、建築コストについて熟知していれば設計士や施工管理での仕事の幅が広がります。
加えて、設計士の責任者や現場監督など、各業務におけるトップになりたいなら建築士の資格は必須です。
積算業務はキャリアアップしながらキャリアチェンジも目指せるという利点があるのです。
建築業界のほかの仕事が気になる方は、以下の建築系の就活記事もご確認ください。
積算業務に向いている人の特徴
まず、積算業務に向いている人にはどんな特徴があるのか、確認してみましょう。
- 数字に強く責任感がある
- 向上心がある
- 細かい作業を苦に感じない
- 建築関連の知識や経験がある
一つずつ説明していきます!
数字に強く責任感がある
積算業務においては、数千万円~数億円規模、場合によっては数十億円以上の規模の金額を計算しなければなりません。
施工主の予算や希望、工事にかかる費用、自社の利益など、様々な金額を扱いながら見積もりをしていくことになります。
そのため正しく計算ができないと、大赤字を出してしまうなど損害を被ってしまう可能性もあるでしょう。
理系である必要はありませんが、数字に強いこと、計算が苦ではないこと、そして業務に責任をもって対応できる人が向いているといえます。
向上心がある
積算業務のなかでは、設計士や現場監督など他の建築業務でも有効な建築士や建築コスト管理士などの資格を取得しながらキャリアアップできます。
さらに建築法などの守らなければならない法律や、業界特有の元請や一次請け・二次請けなどの会社間の関係で見られる慣例もあります。
それらの業界特有の知識を学びつつ、資格も取得できる人だと活躍しやすいでしょう。
むしろ向上心がまったくないという方は、積算業務にはあまり向いていないかもしれません。
細かい作業を苦に感じない
見積もりを行い費用が確定しても、工事の進捗などによって変更や修正が発生する場面も多々あります。
そのため状況に応じて図面や見積書を見直して、何度も細かく調整する必要があります。
工事完了の最後まで詳細な点に気を配りながら、作業ができる人は向いているといえるでしょう。
建築関連の知識や経験がある
何かしら建築関連の知識や経験がある場合は、活躍しやすいでしょう。
たとえば実際に工事現場での経験があると、「建築現場では何が起こるか」をリアルに想像できるため、積算の正確性が増していきます。
そのため何かしら建築に関わった経験がある方は、活かしながら積算業務を目指して行きましょう!
とはいえ、いま現場経験や建築関連の知識がなくても、不安に思う必要はありません。
なぜなら、知識は学んでいけますし、経験は業務をこなしていけば増やせるからです。
建築関連の知識や経験を学び、体験していくことで積算業務の精度も上がっていくでしょう。
建築関連の知識や経験がある人が向いていることはもちろんですが、知識や経験がなくても、一生懸命に学ぶ姿勢や意欲がある方なら問題ありませんよ。
まとめ
積算業務とは建築業界特有の仕事で、以下のような業務を行います。
- 人件費・材料費・工事費を算出
- 工事費用の決定と資料作成
- 価格の交渉や提案
建築士や建築コスト管理士など、積算業務で活躍するために有用な資格は他の建築業務でも活用できます。
積算業務でのスキルアップやキャリアアップが、その後のキャリアチェンジにもつながっているのです。
- どうすれば積算業務の仕事ができるのか知りたい
- 自分が積算業務に向いているか気になる
- 積算業務を含めて、自分のキャリアプランを一緒に考えてほしい
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