もくじ
一般的に、理系学生のおよそ4割が大学院へ進学するといわれていて、上位大学であればあるほどその進学率は高いとの声も。
そのため、上位大学からの人材採用を狙う大手企業は、大学院卒以上を採用条件としているケースも珍しくありません。
理系院卒が多いということは、それだけ「就活のライバルが多い」ということ。
就職活動においては、学歴だけではなく人柄や熱意なども含めて総合的に評価されるため、“なんとなく”面接を受けても内定は勝ち取れません。
多くのライバルたちから頭一つ抜き出て評価され内定を勝ち取るには、“勝てる戦略作り”が大切です。
そこでこの記事では、理系院卒の就職事情や、就活を成功させるポイントを紹介します。
ぜひチェックしてみてください。
- 理系院卒ってどのくらいいるの?
- 理系院卒を多く採用しているのはどんな企業?
- 理系院卒が就職しやすい職種とは?
- 理系院卒が就職でトクすることは?
- 理系院卒が就活で陥りやすい3つの落とし穴
- 理系院卒が就職を成功させるポイントは?
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理系院卒ってどのくらいいるの?
まずは、理系院卒はどのくらいいるのかを公的データに基づいて詳しく解説していきます。
文部科学省が実施した「学校基本調査 / 令和5年度 高等教育機関 卒業後の状況調査 卒業後の状況調査票(大学)」では、理系学生のうち何人が進学したのかが公表されています。
UZUZ編集部では、そのデータをもとに理系学生の大学院進学率を計算しました。
なお、この調査は令和5年3月に卒業する学生を対象に行われたものです。
理学部における大学院進学率は約44%、工学部は約39%、農学部は約27%という結果になりました。
理系学生の中でも学部によって異なりますが、およそ3割から4割が大学院進学率の目安となっています。
一方、大学生全体における大学院進学率は約12%であることから、文系と比較して理系の院卒がどのくらい多いのかが分かります。
参考:文部科学省「学校基本調査 / 令和5年度 高等教育機関 卒業後の状況調査 卒業後の状況調査票(大学)」
やっぱり多い?理系院卒を積極採用している企業
理系の院卒者を積極的に採用している企業を知っておけば、就活を進める手がかりにもなります。
ここでは、『就職四季報2020年版』のデータを基にして、理系院卒を多く採用している会社を見ていきましょう。
理系院卒を最も多く採用している企業はホンダ
理系院卒の採用数、第1位は自動車メーカーのホンダ!
院卒採用数363人のうち、文系はわずか7人で、なんと356人(98.1%)が理系でした。
ホンダとしては製品開発に携わる理系の技術者を多く採用したい
理系院卒としてはホンダのような自由な環境で研究したい
といったことが、理系院卒の大量採用につながっているのでしょう。
第2位は空調機器メーカーのダイキンで、院卒採用数239人のうち、235人(98.3%)が理系の学生でした。
ダイキンはフッ素化学事業も展開しているため、機械系の学生だけでなく、化学系の院卒者も多く募集していることが理由といえるでしょう。
電子機器や重化学工業系のメーカーが理系院卒を多く採用
その他、理系院卒の採用数が多い企業は以下の通り。
- 京セラ
- 新日鐵住金
- 野村総合研究所
- JFEスチール
- オリンパス
電子機器メーカーや重化学工業系の企業が多いことがわかりますよね。
これらの企業は、大学院レベルの専門的な知識をもった開発者や研究者を多く募集しているといえるでしょう。
参考文献:「就職四季報2020年版」
理系院卒が就職しやすい職種とは
理系院卒は、研究職や開発職など理系のイメージが強い職種の他、意外と知られていませんが論理的思考が求められる文系職も実は狙いやすいのです。
ここでは、具体的にどんな仕事に就きやすいのか解説していきます。
理系院卒が就職しやすい「理系職」
理系院卒が就職しやすい「理系職」には、以下のようなものがあります。
- 研究職
- 開発職(研究開発職)
- 生産技術職
- 組み込みエンジニア職
理系職の中でも、大学院生が圧倒的に有利とされるのは大手メーカーの研究職です。
- 修士以上の学生だけを採用している企業もある
- 大学院の推薦で就職が決まることも多い
といった理由から、大学院に進学する人も多いでしょう。
とはいえ、いくら理系院卒のほうが研究職に就く際に有利であるとはいえ、決して簡単なわけではありません。
次のようなポイントを把握して、対策を練っておくのが重要です。
- 研究職の採用枠は少なく難関であること
- 研究職と開発職は違うということ
さらに、ライバルも同じ理系院卒であることが多いため、自分の研究成果をしっかりとアピールしなければ内定はもらえません。
加えて、研究職と開発職の違いを知っておくことも大切です。
似たような名前ですが、以下のようにそれぞれの仕事内容は異なります。
- 研究職:基礎的な研究をする仕事
- 開発職:製品化のための研究開発をする仕事
基礎研究だけではなく、製品化やマーケティングにまで携わりたい人は、研究職より開発職のほうがおすすめです。
次の記事では、研究職と開発職の違いを詳しく解説していますので、参考にしてください。
その他、研究職や開発職と似た仕事として、
- 生産技術職:生産ラインの効率化や人員配置を考える仕事
- 組み込みエンジニア職:機器に組み込まれるシステムを開発する仕事
といった職種もあります。
詳しい仕事内容は下記の記事で紹介していますので、気になる人はチェックしてみてください。
就職してから「こんなはずじゃなかった……」と思わないように、各仕事の違いをきちんと知っておきましょう。
理系院卒が就職しやすい「文系職」
理系の院卒が文系職と聞くと、意外に感じる方もいるかもしれません。
ですが、実は理系院卒でも就職しやすい文系職がいくつか存在しています。
- コンサルティングファーム
- 金融
- 総合商社
などは、理系でも狙いやすい文系職といえるでしょう。
その理由は、これらの職種では理系に以下のようなことが期待されているからです。
- 理系的な論理的思考力や問題解決能力
- 計算力や数字を用いた分析力
- 研究に打ち込んだ経験に基づく激務への対応力
さらに外資系企業であれば、理系と文系の区別がない場合も多いので就職しやすいといえるでしょう。
幅広い職種や業界にチャレンジできるのは、理系院卒の大きなメリットですね!
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
理系、文系の区別はそこまで重要ではない
そもそも「理系」や「文系」という区切りは日本独特のもので、世界ではあまりこの二分はしていないことをご存知でしょうか。
理系といっても、基礎研究や応用研究・数学・物理・生物・化学、ほかにも様々な分類がありますし、工業系も近接分野です。
それらを一括りにして「理系」と呼ぶことはできません。
文系にしてもそれは同じ。
また、働き始めてから「理系だから」「文系だから」という区別もナンセンスです。
- 理系で話が苦手だから、会議で発表したくない
- 文系で計算が苦手だから、数値的な根拠を入れずに営業する
そのようなことは、あまりビジネス現場では認められません。
仕事においては、理系か文系かではなく「何ができるか」を見られます。
「〇系だからこれができない」ではなく、今自分ができること、得意なことをどのように活かせるかが大切です。
理系院卒が就活でトクすること
理系の学部卒よりも院卒のほうが就職でトクすることはありえるのでしょうか。
就職する業界や企業によって異なるため一概には言えませんが、次のような点でトクすることもあるでしょう。
初任給が高い
厚生労働省の調査によると、学歴別の初任給は以下の通り。
- 大学院修士課程修了:23万8,900円
- 大学卒:21万200円
- 高専・短大卒:18万3,900円
- 高校卒:16万7,400円
学歴による給料の差は会社によって異なりますが、最終学歴が高いほど給料もアップする傾向にあります。
学部卒と院卒で比較すると、およそ3万円ほど院卒のほうが高いという結果になっていました。
1年目の年収で考えると、賞与を抜きに考えても約36万円の差が出るので、給料の面では院卒で就職するほうがトクといえるかもしれません。
ただし大学院卒は就職年齢が大学卒よりも高いため、昇給分と比べると同じ年齢ではそれほど大きくトクというわけではありません。
参考元:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給」
“やりたい仕事”に就ける可能性が高い
自分が希望する仕事に就きやすいことも、院卒がトクするポイントといえます。
院卒は専門スキルを身に付けているため、同じような志望度であれば、企業側は学部生よりも院卒を採用しようと考えるからです。
- やりたい仕事に関する専門スキルを身に付けておく
- それを面接でしっかりアピールする
といったことが重要です。
学部生も本気で面接に挑んできますので、十分に準備しておかないと内定は勝ち取れません。
キャリアアップしやすい
就職した会社の中でキャリアアップしやすいことも、院卒がトクするポイントです。
専門的な知識やスキルを持っているため、若いうちに
- 大きな仕事を任される
- リーダーや管理職的なポジションを任される
というケースもあるでしょう。
その分プレッシャーや責任は増えますが、「バリバリ働きたい!」という人にとっては嬉しいポイントですね。
理系院卒が就活で陥りやすい3つの落とし穴
理系院卒は、学部生と比べて専門的な知識があるという点では、就活に有利といえます。
一方で「理系院卒だから就活は大丈夫」とたかをくくっていると、思わぬ落とし穴に見舞われるかもしれません。
ここでは「理系院卒が就活で陥りやすい3つの落とし穴」を紹介していきますので、理系院卒の人は就活時に意識してみてはいかがでしょうか。
1.「理系院卒だから就活は大丈夫」と就活対策を疎かにしてしまう
理系院卒が就活で陥りやすい代表的な落とし穴に「理系院卒だから就活は大丈夫」と考えて、就活対策を疎かにしてしまうケースが挙げられます。
理系院卒は就活に有利といわれる一方で、理系は大学院進学率が高く希少価値が少ないため、院卒というだけでほかの就活生と差別化するのは難しいものです。
また、就活ではエントリーシートや筆記試験、面接やグループディスカッションといった多くのフローがあり、何も対策をしない状態ではほかの就活生に太刀打ちできないでしょう。
そのため、理系院生は学業だけでなく就活対策にもしっかりと打ち込むことが欠かせません。
さらに、ほかの就活生と差別化することを常に意識しつつ、自分の強みや個性を企業へ明確にアピールできるように用意しておきましょう。
2.専攻分野にこだわるあまり選択肢を自ら狭めてしまう
理系院卒の強みとして「専門的な知識」が挙げられますが、それが裏目に出てしまい自分自身を追い込んでしまうおそれも。
いくら優秀な人材でも企業が求める人材像とミスマッチがあれば採用されるのは難しいため、できる限り多くエントリーしてマッチする企業に出会う機会を増やすことが重要です。
しかし、専攻分野にこだわるあまり、エントリーする業界や企業を絞り過ぎると、選択肢を自ら狭めてしまうかもしれません。
新卒採用ではポテンシャルを重視される傾向が強く、大学院での専攻分野とは異なる業界でも採用されるチャンスは充分にあります。
就活時には自分の専攻分野から一度離れて、企業探しや業界研究を自由に行ってみてはいかがでしょうか。
3.研究との両立が難しく就活スタートが遅れてしまう
一般的に、理系院卒の就活は修士1年目の6月に開始するのがおすすめといわれています。
その一方で、理系院卒はほぼ毎日研究を行う必要がある上に、学会発表の準備などに追われることも。
そのため、研究との両立が難しいという理由で就活スタートが遅れてしまうケースもあります。
しかし、就活というフィールドで戦うほかの就活生は、自分と同じように研究を抱えながら就活を進めているものです。
ほかの就活生に遅れをとらないためにも、動き出しは早め早めを意識していきましょう。
理系院卒が“勝てる”就活をするには
それぞれ順番に見ていきましょう。
学部卒との違いを知っておく
学部卒と院卒の大きな違いは、専門性にあります。
学部卒は就職に際してポテンシャルを重視されます。
これから長く一緒に働いてくれそうか、成長性はありそうか、といったポイントを見られます。
一方で院卒は、それまで学んできたことや実際にどれだけの専門性を発揮できるかの知識とスキルが重視されます。
ポテンシャルのアピールも必要ですが、学部卒がアピールするような「若さ」「フレッシュさ」よりも、これまでの研究で積み上げてきたものをアピールするほうが良いでしょう。
学校推薦や教授推薦などの「推薦枠」を利用する
理系院卒が有利に就活を進める1つ目の方法は、「推薦枠」を利用することです。
推薦枠とは、企業が大学の専攻分野ごとに設けている採用枠のこと。
- そもそも企業と大学の信頼関係がある
- 教授が推薦状を書いてくれる
といった後押しがあるため、推薦枠を利用すれば、高確率で内定を勝ち取れるでしょう。
ただし、内定が出た後に断ることは基本的にNGです!
企業と大学の関係性を壊すことにつながるので、本当に就職したい会社に絞って推薦を受けましょう。
推薦枠についての詳しい説明は、以下の記事を参考にしてください。
研究内容を分かりやすく伝えられるようにする
面接では、大学院での研究内容を分かりやすく伝えることも重要です。
理系の研究は専門的であるため、どうしても専門用語などを使った難しい説明になりがち……。
しかし、すべての面接官が理系の専門知識に詳しいわけではないため、場合によっては専門用語がうまく伝わらないことも多いのです。
誰にでも分かりやすく伝えられるよう、しっかり練習しておきましょう。
これはなにも、面接の場のみに限ったことではありません。
専門的な研究を仕事にしたとしても、専門家でない人と会話する機会は必ずあります。
研究内容を伝えると同時に、
- 長期間の研究を成し遂げる忍耐力
- 相手によって言葉を変えるコミュニケーション能力
などもアピールするのが内定を勝ち取るポイントです。
視野を広げて専攻分野以外の業界も検討してみる
アカリクが2022年3月から4月に実施した理系大学院生を対象にアンケート結果によると、およそ4割の理系大学院生が「専門外分野の業界への就職を検討している」と回答しました。
前述の通り、理系院卒の就活では自分の専攻分野以外にも目を向けることが重要です。
大学院では専攻分野の知識だけでなく、学会発表や研究を通じてプレゼンテーションスキルや論理的思考力を身に付けられるはずです。
そのため、専攻分野にこだわり過ぎず、視野を広げて専攻分野以外の業界も検討してみましょう。
参考:アカリク「理系大学院生の就活はいつから?効率的な進め方とスケジュールの組み方を解説 」
就職エージェントで効率的に就活対策を行う
理系院生が研究と就活を両立するためには、就活対策をいかに効率的に進めていくかが重要です。
その方法のひとつとして、総合的な就活サポートを受けられる就職エージェントの利用がおすすめです。
就職エージェントは、書類添削や模擬面接、自己分析や企業探しといった点で就活全体のサポートを行います。
就職エージェントを利用すると、就活の基本を学べるだけでなく、自分の個性や希望に合った仕事に出会える可能性も広がります。
自分ひとりだけで就活対策を行うよりも、スムーズかつ効果的に進められることでしょう。
さらに「自分にはどんな仕事が向いているのか分からない」「専攻分野以外だとどんな業界が良いのか悩んでいる」などの相談にも乗ってもらえるメリットがあります。
監修者コメント
岡本啓毅HIROKI OKAMOTO
採用試験では専門性に+αで社会人としてのスキルが求められる
院卒の場合、学部卒よりも長く研究していることが大きなアドバンテージといえます。
学部卒が社会人経験を積んでいる間に研究を続けているので、学部卒と比較して専門性は「あって当然」と見られています。
そのうえで、現在はコミュニケーション能力がある専門家が求められる傾向にあります。
「理系だから」「文系だから」という区別は、ビジネスにおいては無意味です。
ですが、それに縛られている社会人が大勢いるのもまた事実。
専門性は高いものの「私は理系で話すのは苦手だから」とコミュニケーションを取ろうとしない研究者。
一方で、専門性が高くなおかつ積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれる研究者。
どちらと仕事をしたいと思われるでしょうか。
理系院卒は「専門性×別のスキル」でアピールすることも考えてみてください。
まとめ
理系院卒の就活では、まずは学部卒との違いを意識することが重要です。
そのうえで、しっかりと専門性があることをアピールしつつ、加えて専門性以外にも何かアピールポイントをもっておくと成功しやすくなります。
おすすめは、コミュニケーション能力のアピールです。
ですが、今まで研究を頑張ってきたのに「次は就活を!」と言われても、なかなか切り替えられないですよね。
そんなときは、第三者に相談してみることもご検討ください。
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第三者なら面接などの練習もしやすいですし、UZUZなら理系出身のキャリアアドバイザーも在籍しているので、理系院卒ならではの就職対策などもできます!
コミュニケーション能力を高める方法についてもお教えします。
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