前回は鉄道業界の今と今後を知ろうという事で解説していましたね。覚えてますか?前回の記事はこんな記事でした。既卒のための鉄道業界解説Vol.1|鉄道業界の今と今後の動きを知ろう!。今回ご紹介するのは、鉄道ビジネスの今後を担う一手、鉄道車両の海外輸出事情に関してです。
鉄道車両の海外輸出事情
以前にもご紹介した通り、電車1両つくるのには2億円程の費用がかかっています。10両編成の電車になると、20億円くらいかかってるんですよ?それに、新幹線を作ろうとすると45億円くらいかかるんです。
そのため、海外輸出事情が今後の鉄道事業の重要なポイントになるのです。実際に、鉄道車両を1両作るのにあたっては関係会社がたくさん出てきます。車輪を作る会社、ブレーキを作る会社、車両そのものを作る会社など。色々な関係会社が携わってくるので、様々な産業に影響を与えます。
それゆえ、それを海外に輸出するとなるともう各国はこぞって手を上げます。日本も負けてはいられません。というより、既に日本の鉄道車両と海外との繋がりは数多くあるんですよ。皆さん知ってます?どのような関わり合いかというと、例えばこちらの写真をまずどうぞ。
この電車はJR東日本で埼京線として活躍していた車両ですが、2013年にこの車両180両をジャカルタの鉄道事業者に譲渡しました。既にジャカルタには過去に日本で活躍していた車両が譲渡されており、その継続にあたります。
このように日本の鉄道車両が国外に譲渡された例は数多くあるのです。その譲渡先の例を簡単に挙げると、中国・ロシアサハリン州・フィリピン・インドネシア・アルゼンチンのブエノスアイレス地下鉄・ミャンマー・ジャカルタ・マレーシア・ベトナムなどなど・・・。アジアを中心に日本の鉄道車両が今なお活躍しているのです。
車両制作、どれだけの企業が関わる?
このように、日本は既に海外との関係はあるのが御理解頂けたかと思います。それだけでなく、海外に鉄道を輸出するとなるとどれだけのメリットが生まれるのか。これは業界研究をする時に考えて欲しいポイントでもあるのですが、単体でモノをみてはいけません。
どういう事かというと、例えばJR東日本が◎◎をやっているという理解ではなく、そこに関わる全ての事業者に対しての視点を持って欲しいという事です。「電車が走る」鉄道ビジネスですが、電車が走るということは電気を受け取って車輪を回しますね?それゆえ、電力会社との関係性も出てくるのです。同じように、車両を運行するのはJR東日本ですが、その車両を製作する企業だってある、その元となるステンレスを卸している企業にも影響がある。
このように、鉄道事業をさらに大きな視点で視ると、この業界の与えるインパクトが見えてくるのです。日本という国単位で車両製作の案件を受注する事が出来れば、鉄道車両を作るにあたって携わる以下の企業に恩恵が出るんです。海外輸出案件が決まれば、かなり、デカいという事が理解頂けるかと思います。
参考元:東洋経済新報社「会社四季報 業界地図」より抜粋し、筆者作成
そもそも、電車ってどれくらいもつものなの?
鉄道車両は何年使えるのか? じつは法律による規制はないんです。自家用車と同じで、修理して法定検査をパスしさえすれば、何年間でも走らせてよいものです。ただし、まったく法律と無縁というわけではなくて、税制上の耐用年数が決められています。原価償却される期間は法律上で決められている、つまりこの期間くらいは使えるでしょ?それ以降は好きにして。っていう取り決めがあるのです。
鉄道車両の減価償却期間は、「電車が13年」「電気機関車と蒸気機関車が18年」「ディーゼル機関車やディーゼルカーが11年」などです。もちろん、実際の鉄道車両はもっと長持ちするように作られているから、減価償却が終わったからといってすぐに廃車となるわけではないですよ。
むしろ、減価償却期間が過ぎた車両を使えば、車両の製造経費が計上されなくなるので利益は増えますよね。鉄道車両を長く使うほどコスト削減につながるというわけなんです。
JR西日本では、国鉄時代からの電車を長持ちさせようと、「N40延命工事」を実施しました。「耐用年数20年として設計された電車でも、主要部品を新品に交換すれば、あと20年は使える」という考え方です。利口ですね、ま、古い電車もなかなかアジがあって良いじゃないですか。僕は好きですよ。古い電車も。
ただし、長く使うメリットにも限度はもちろんあります。経年劣化によって車体が傷むし、動力部品も古いタイプは入手出来なくなる。また、性能の古い車両を残して、新しい電車と混在させると、その路線では古い電車の性能に合わせたダイヤにする必要がある。
スピードアップした新型車両も、古い電車に合わせて走らせなければならない。古い電車が消えるのは寂しいけれど、新型車両にそろえれば路線全体のスピードアップにつながる。そんなジレンマの狭間で揺れているのです。
また最近では、信号設備や車両管理などIT技術を搭載した車両が増えてきているんです。IT技術の進化に対応させるため、当初から、「減価償却期間を過ぎたら引退し、リサイクルして新型を作ろう」という構想で作られる車両もある。
JR東日本の209系電車が早く引退した理由もそうだし、その後に作られたJR東日本のE231系以降の通勤電車も同様の形です。新しい電車が出て来てもすぐに入れ替わっちゃうのは、既にそういう狙いがあっての事なんですね。プロトタイプって感じでしょうか。
ところで、日本の鉄道ビジネスは海外に誇れるのか?
日本の鉄道を改めて再認識してみましょうか。鉄道事業は他の交通機関に比べて優れた環境性能を有しています。2007年度のデータを参照して他の交通機関と比較すると、一人1キロメートル輸送する際の鉄道のCO2排出量は、航空機の1/6、自家用乗用車の1/9となっています。また消費エネルギーについても、鉄道は航空機の1/4、自家用乗用車の1/6となっているのです。そうなんです、すごいんですよ鉄道って!!
日本の鉄道システムは、個別要素技術を統合することによって、優れた省エネルギー性、高い安全性と信頼性等を実現していて、世界的にも注目されています。
特に新幹線については、大きく軽量な車両、トンネル断面積などの面で小さな構造物、地震の早期検知による脱線防止、連続する急勾配区間での高速走行性能などの特徴を有していて、省エネ性、小さな沿線騒音、快適な車内空間、大量輸送、低い建設・維持管理費といった面で、他国の高速鉄道に比べても際だった優位性を誇っています。
とりわけ、1964年の東海道新幹線開業以来46年にわたる乗客死傷者ゼロという安全性、1列車あたりの平均遅れ時間1分未満という高い信頼性はかなり評価すべき実績といえるでしょう。このように優れた日本の鉄道システムを海外に展開することは、相手国の経済・社会の発展に寄与し、さらには地球環境問題への貢献に大きく寄与するものとして今注目されているんです。
(参照:外務省HP インフラ海外展開の推進より抜粋し編集)
さて、ようやく前提知識が整いました。今回はここまででPart-2に期待しててください。Part-2では具体的に海外の鉄道事業の世界的市場の動きや具体例。その辺りについてご説明していきますよ!!