人事採用担当者への取材(株式会社インスパイア様)|人事は人材の可能性を見出すこと
はじめに
経営の中枢となる人材獲得の課題について、大手企業から中小・ベンチャー企業との関わりがあるUZUZが、現役の人事・採用担当者にインタビューをする企画。
今回は、就職活動の経験がないなか「人事・採用」の担当者として抜擢された株式会社インスパイア 人材営業部Smgrの布沢さんにその経緯と、人事の心構えについてお伺いしました。
布沢 太一|株式会社インスパイア 人材営業部Smgr 埼玉県朝霞市出身、川越市立川越高等学校を卒業後社会人へ。 新卒でプロ野球業界に携わり、もう一度自分もプロを目指したいという想いから1年で退職し社会人野球の選手へと。21歳で現役を引退し、当時勤めていた会社で新たにスタートした人材事業へジョイン。その後、会社の倒産などを経て2020年2月に株式会社インスパイアへ人材事業と人事部の立ち上げを目的に入社。 |
就職活動の経験なしで「人事・採用」の担当者に
-まず布沢さんご自身についてと、どのような経緯でインスパイアの「人事・採用担当」になられたのかお聞かせください。
布沢さん:
前職で務めていた会社が突然倒産したことがきっかけでした。
当時の僕は仕事を始めて半年ぐらいだったので、ほぼ新人状態でした。上司や同僚が辞めていくなか、自分自身も今後どうしようかなと考えていたとき、もともとクライアントだったインスパイア代表の松山から「一度会えないか」と連絡を貰いました。
当日、本社に向かうと「実はインスパイアで体育会系特化の人材紹介事業を立ち上げたい」と言われました。
当時のインスパイアは、従業員数12名くらいで事業もWEB事業のみでした。松山から「新規事業として人材事業をやりたいこと」、「大阪にも営業所を開設したいので、自社採用にも注力したいこと」、それらをやってくれる人材を探していて、そのポジションを僕に任せたいということでオファーをいただきました。
しかし、僕は人材事業を辞めようと思っていたタイミングで。とくに採用周りについては、向いていないと思ったんです。
というのも、僕の最終学歴は「高卒」で、高校を卒業してからずっとプロ野球業界の仕事や社会人野球の選手としてプレーしていました。
たまたま前職で人材に携わる機会があっただけなので、大学生のことはわからないし、自分自身が人生で一度も面接を受けたことがなかったんですね。なのでこんな自分に事業責任者や人事・採用が務まるとは思いませんでした。
そんな時に松山がなぜ体育会系特化の人材紹介を立ち上げたいのかを話してくれました。
松山自身が日本体育大学を卒業し、ビジネスの世界へと飛び込んだわけですが、元々は松山もスポーツ選手を目指していたようでした。
しかし夢が破れ、なんとなく就活をするも全く受からない。そんな時に内定をくれた株式会社光通信へ新卒入社し、そこで本気で数字と向き合い営業をしている社員たちを見て「ビジネスもスポーツと一緒だ」と感銘を受け、熱中した結果が今だという話を聞きました。
そんな当時の松山のように、スポーツで夢が破れて目標を見失っている学生、就活で受からないと困っている学生は今もいるのではないか。そういう学生を支援したい。そんな話でした。
松山がインスパイアという会社を創業したのは、ビジネス人生を劇的に変えてほしい。学生時代何か一つのことを頑張っていた子がビジネスという場にステージを変えたとき、プロスポーツの選手と同じくらい活躍して、最低でも年収1,000万以上を取れるようになってほしいという想いからでした。
その話を聞いたときに、大変感銘を受けたと同時に強く共感したんです。
そして松山から単刀直入に布沢君も「経営者を目指せ!」と言われました(笑)。
仕事を辞めようとしていて、しかも高卒の僕に「経営者を目指せ!」なんて驚きました。
松山からは、「ビジネスというのは、学歴も性別も国籍も何も関係ない。なりたいと思ったものにしかならない」という言葉と「責任で動くのではなく、使命感を持って自分にしかできない仕事をやるべきだ」という言葉を貰いました。
間違いなく、この瞬間僕のビジネス人生が変わりました。
正直、今まで仕事に対するモチベーションは無く、やりたいことも不明確でした。しかし、松山に出会って仕事を頑張る理由や目的が明確になったので、インスパイアで事業責任者、人事・採用担当者として入社することを決めました。
コロナ禍でも学生との接点を継続し、母集団として獲得
-これから事業拡大を目指していく会社での「未経験人事」、布沢さんはまずどんなことに取り組んだのでしょうか。
布沢さん:
先ほども少し触れましたが、僕自身就活をしたことがなく、就職活動すら理解していない状態でインスパイアの人事・採用担当になりました。入社した途端、コロナという有事に見舞われ、素人人事の僕にとっては大変な時期でしたね。どんな母集団形成が良いのかもわからないまま、一旦走り出しました。
インスパイアは12名くらいの会社だったので、大規模で開催される合同説明会よりも、スカウト型で魅力を伝えられる方が自社に合っていると思い、小規模の新卒求人サイトやナビサイトの選定から始めました。ナビを選定した後で行ったことと言えば、「会社のことをどう学生さんに伝えていくか」という点をすごく考えました。
外部へ発信する前に、自社で働く社員のことをより知る必要があると思ったので、社員や営業責任者との食事や飲み会を介してコミュニケーションを取っていました。僕がインスパイアへ入社したのは9期目だったので、どんな経緯で9年間を過ごしてきたのか。そう言う会社と社員の歴史を辿ることから始めました。
コロナになってすぐ説明会が中止になり、インスパイアも説明会自体をとめていましたが、面談はとめずにオンラインとオフラインで毎日6〜7件の面談を設定していました。ですので、3月〜4月は積極的に学生と会っていました。
その後、母集団形成をして5月から説明会を開始しようというタイミングで、3月〜4月に面談していた学生たちが説明会に足を運んでくれるという良い流れができました。
これまでは3〜4人くらいの新卒採用でしたが、初年度は10人採用できました。
また、10人中の半分は3月〜4月に面談をした学生だったので、コロナ禍でも学生との接点を無くさないということが結果につながったのだと思います。
女性社員の採用と社員の定着に課題、インスパイアが行った施策とは
-初年度で10人!すごい成功体験になるかと思いますが、反対に苦戦したことや失敗したことなどはありますか?
布沢さん:
当初インスパイアには、新卒のモデルとなるような人がいませんでした。正直な話、定着率もあまり良くなく女性社員はほとんどいなかったので、女性の採用に苦戦するという課題がありました。
会社を拡大していくうえでも女性社員の必要性を感じていたので、シンプルに女性に特化した採用施策を考えました。
最初の説明会では、女性社員が少ないこと、辞めてしまうことを濁して伝えていましたが、自分たちの状況や課題を学生にもしっかり伝えることでミスマッチを防げるのではないかと思い、「実際に女性社員が少ないこと」、「女性の責任者や営業がいないこと」、あとは「社員の定着率に課題があること」これらをオープンにしました。
だからこそ、女性のロールモデルになるような人を採用したいということも同時に伝えていきました。
そんな環境で「自分が責任者やロールモデルになりたい。」という学生と、そうではない学生とではっきり分かれました。説明会の開始2秒で「辞退します」と言われたこともあります(笑)。
ただ、今だからこそ言えますが割り切って良かったと思います。
それらの結果、当時1名だった女性社員が現在では8名在籍しています。また、一番はじめに採用した女性社員が昇格して責任者になったり、中途採用した女性社員も約半年で営業責任者という立場になっています。
まさに、女性社員のロールモデルになる人材が育っていると感じています。
可能性を引き出し、活躍できる人材を発掘することこそが人事の仕事
-インスパイアの今後の目標をお聞かせください。
布沢さん:
インスパイアとしては現在、東京と大阪の2拠点のみですが、毎年1拠点くらいは全国の主要都市に事業所を開設していきたいと考えています。
また、サービスについてもWEBと人材事業の2軸で展開していますが、社員のやりがいや目標値を高めていくためにも新規事業の拡大も視野にいれています。
-最後に未経験で人事・採用を担当される方に「心構え」についてメッセージなどをいただけますでしょうか。
布沢さん:
人事の仕事は、定量的にただ評価する、ジャッジする仕事ではなくて、学生や求職者の可能性を引き出す仕事だと思います。とは言え、あくまで経営側なのでジャッジする必要もありますし、規模によってはまずは数を採用する場面もあるかもしれません。
ですが、学生や求職者の可能性を信じて引き出してあげるのが人事の仕事だと捉えています。誰が活躍するかなんて正直わからないので、そこを発掘してあげることが人事の腕だと思います。
ホームランをたくさん打ってきた人を採ればいいわけではなく、3年後5年後に活躍する人ってどんな人間性があってどんな志向性がある人なのか。
そういう視点で考えて行動することで人事の仕事はやりがいや魅力に溢れ、面白いと感じられると思います。
今思えば、僕自身、代表の松山に可能性を引き出してもらったのだと思います。今こんなことを話していることすら18歳で社会に出た時は想像できませんでした。それがビジネスの一番面白いところだと思うので、引き続き定量的ではなく、個々と向き合っていくスタイルの採用を大切にしていきたいと思います。
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