UZUZは、どんな学校を作りたいのか
今回は、前回(「学校を作りたい」その理由を説明してみた)の続きとして、「どんな学校を作りたいのか」についてお伝えしていければと思います。
まず最初に単刀直入に発表します。
ずばり、「日本版ミネルバIT専門学校」を地方に作っていきたいと思っています。
ミネルバ大学とは、“特定のキャンパスを持たずに各国を巡って学ぶことができる”有名なアメリカの大学です。すでに「さとのば大学」の信岡良亮さんが、大学でそれを実現しようとチャレンジされていますが、私はそのIT専門学校版を作りたいと考えています。
※私が作りたい専門学校にはキャンパスはあるので、厳密には違うのですが……
なぜ「専門学校」なのか
「今の時代にわざわざ専門学校なんて行かないよ」という声も多くあると思います。ですが、私は今の時代だからこそ専門学校にも独自の価値があると考えています。
出典:平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省
日本人の実質所得はここ30年上がっていません。むしろ下がっています。各家庭にとって、子供を大学まで進学させる教育費は大きな負担となっています。
日本政策金融公庫の2019年度「教育費負担の実態調査結果」によると、私立文系の4年生大学の在学費用は約630万円に対して、専門学校は約289万円。
つまり、45.9%ほど在学費用を抑えることができます。
※在学費用とは以下
また、4年間ではなく2年間という「卒業までの期間が短い点」も大きなメリットがあると考えています。
※専門学校には1〜4年制がありますが、ここでは一番多い2年制で話を進めさせていただきます。
少子高齢化により若者割合がどんどん減っており、各社からの「若い人材を取り入れて、会社を活性化していきたい」という声は年々高まっています。
もし2年間で社会に出るために必要なことを学べ、「卒業後すぐに活躍できる人材」に成長できるのであれば、「社会に活躍できる若者を送り出すことができる点」も専門学校ならではの魅力だと考えています。
なぜ「地方」なのか
それは、日本の未来を支えるのは地方だと思っているからです。
不確実な“経済動向”と違い“人口動態”はかなり正確に未来予測できるため、「どのような未来が訪れるか」はわかりやすいです。
そして、日本の地方の未来には暗雲が立ち込めています。
以下の画像が、2045年の日本の各エリアにおける総人口の指数です。
例えば、私の出身地でもある「北海道」。ご覧の通り、真っ青です。これは2015年の人口を100とすると、2045年の人口が半分以下に減る地域が多いことを指しています。
今隣にいる人を見てください。2045年には、貴方か隣の人のどちらかがいなくなっているのが北海道の未来です。
また、これは北海道だけの話だけではありません。
東京などの大都市を除いて、日本全国で起こることです。そして残念ながら、この未来は確実に訪れます。人は歳を取れば亡くなるので、現在の年齢と平均寿命から導き出されている答えです。
「東京は人口がキープできるから大丈夫だな!」
と、ほっと胸を撫で下ろしたした人もいるかもしれません。
ですが、全く安心できません。
東京の出生率は「1.08」と全国で最も低い数字です。それでも人口をキープできているのは、地方の若者を吸収しているから。
その地方の若者は、先ほどお伝えしたようにこれからどんどん減っていくため、東京に送り出せる若者も減っていきます。
そのため、現在は1,400万人程いる東京都の人口も、2030年の1424万人をピークに、減少に転じると言われています。
また、首都圏に住む人が食べているご飯は地方で作られています。そこで無視できないのが、地方で食品を作っている生産者の年齢が高く且つ後継者がいないという問題。
今、食品を生産して下さっている方が亡くなってしまい後継者がいないままだと、ただでさえカロリーベースの食料自給率が38%と低い日本の食料事情は、どんどん悪化してしまいます。
つまり地方が衰退することは、東京の衰退にも直結するということ。
これ以外にも、“東京一極集中”で東京に人が集まっている状況には大きなリスクがあります。
首都圏直下地震は30年以内に70%の確率で発生すると言われています。また、ロシア・ウクライナのようにいつ戦争が起こるかはわかりません。
大規模な地震が起こったり、戦争が起こってしまい首都圏の機能が停止してしまった時に、日本各地の地方が死んでしまっていたらどうなるでしょうか?
そうです、日本全体の活動が止まってしまうリスクが高い状態なんです。
今の日本の現状は
- 東京の人にとってもリスクが高い
- 人口が激減する地方は、さらにリスクが高い
こんな状態だといえます。
そんな中で、私たちUZUZがするべきことは「人口が激減したとしても、若者がウズウズ働ける世の中をつくる」ことです。
そのために必要なのは、東京一極集中でも多極分散でもなく「多極集中」
東京一極集中の反対で、多極分散(地方分散)とよく言われます。
しかし多極分散では日本は持ちません。
今は、全国の各自治体が移住者を増やすために補助金を出したりして、人口の引っ張り合いをしています。
でも、超高齢化で総人口が減る中、将来的に存続が厳しい自治体に10組若い夫婦を移住させたとしても、そのエリアが生き残ることはできません。焼け石に水です。
「人が点在する」ということは、各地域の社会インフラを整えなければなりません。電気・水道・ガスが通るように整備し続けなければいけませんし、道路や橋が壊れたら直さなければなりません。
人口が減っていればいるほど、社会生活を維持する1人あたりにかかるコストは増大していきます。
「将来的に存続が厳しい地域」に貴重な人が分散してしまうと、日本全体を維持し続けることは難しいんです。
そのため、多極に集中する必要があると考えています。
「どの程度の人口規模エリアに集中させるべきか」と言うと、“現在20万人以上の人口がいる中核都市”である必要があると考えています。
なぜなら、エリア内で高等教育を受けられ、仕事の選択肢があり、医療も受けられるには、人口10万人を維持し続けられることがデッドラインだから。
これから先、人口が半分になってしまうことを考えると、現状で20万人以上の人口が必要なのです。
最終的に人口が10万人になったとしても、専門学校であれば存続し続けることができるので、その地域の外に出ずとも高等教育を受けることができます。
出典:日経アーキテクチュア創刊40周年記念特集「五輪後に勝つ!」より『人口奪い合い自治体に格差』
「小さな自治体を見捨てるつもりか!」と思うかもしれませんが、決してそんなわけではありません。
むしろ「救うための選択と集中」です。
今のまま人口の取り合いを各自治体がやっていると、中核都市にも人が集まらなくなってしまい、魅力がどんどん失われてしまいます。
そうなると、人は中核都市をすっ飛ばして、東京に行ってしまいます。
子供が車で1時間圏内に進学・就職してくれれば、何かあったときにすぐに戻ってきてもらえますが、東京に出てしまうとそうはいきません。
人口規模が小さなエリアに住む人たちが、生き残れる社会にするためにも防衛ラインを決めて、そこで人の流出を防ぐことが必要です。
「こんな魅力的な学校があるのであれば、都会に出ないでここに残ろう」
「そんな魅力的な学校だったら、進学させてあげよう」
若者やその親ににそう決断してもらえるような学校を作っていきたいです。
就職という出口を見据えた教育がしたい
若者や親が学校を選ぶときに重要なことは
「その学校に進学して良い仕事に就けるのか?」
という視点だと思います。
「〜〜が好きだから、それが学べる専門学校に行こう!」と選んだ結果、目指していることとは違う就職先に進んでいる方と多くお会いしてきました。
- 漫画が好きでアニメーション科に進学しましたが、アニメ関係の仕事についている人はほとんどいませんでした……
- CA(キャビンアテンド)になりたくて専門学校に入りましたが、CAになれている人は1割もいなくて、空港の売店スタッフなど違う仕事に就職していました……
キャリア面談を通じて、数多くの専門卒の若者のこのような声をたくさん聞いてきました。
せっかく大金を払って学ぶのであれば、その“学んだこと”を将来のキャリアに活かせる学校を作りたい。
そのためには、しっかりと出口(就職先)がある分野で、「こういった点を学んでいるなら、ぜひ採用したい!」と“企業目線”で魅力的な人材に成長できる学びが得られることが必要不可欠だと考えています。
UZUZは、就職が難しい「新卒じゃない若者」に寄り添ったキャリア支援を創業時から現在まで行ってきました。
そんなUZUZだからこそ、就職に圧倒的に強い学校を作っていけると考えています。
なぜ「IT」なのか
また分野としては、「IT」の領域で学校を作っていきたいと考えています。
出典:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課「IT人材育成の状況等について」
経産省の資料によると、2030年までに41万人〜79万人ものIT人材が不足すると言われています。人口減少が進む日本が経済力を落とさないためには、ITの力は必要不可欠です。
UZUZは、ウズウズカレッジにて若者のIT教育をずっと行ってきました。そして、その教育カリキュラムは「採用する企業目線」で作られ、日々改善され続けてきました。
そんなUZUZだからこそ「就職に直結するようなIT教育」ができると考えています。
また、そのための1つの方法として現在UZUZが行っている地方自治体へのDX支援があります。
現在、北海道旭川市に対してKintoneを活用したノーコード開発で、業務をDX化するというプロジェクトを進めています。
UZUZが自治体のDX化のプロフェッショナルになることができれば、その「ノウハウ」と「学生の若い吸収力」を掛け合わせることで、その地域の若者が、その地域のDX化を推し進めていけるのではないかと考えています。
学生の頃からそんな実務経験を積めれば、各社から「ぜひうちで働いてほしい!」と求められる人材になれることは、間違いないでしょう。
とはいえ、地方の課題として「そもそもエンジニアの求人が少ない」というものがあります。
また、エンジニアはフルリモートを選択しやすい仕事ではあるものの、専門的に学んだとしても実務未経験のまま最初からリモートワークOKで採用してくれる企業もそこまでありません。
ですが、「3年以上の実務経験があれば、フルリモートで働けるよ!」という会社はどんどん増えています。
エンジニアであれば、卒業後すぐは地元で働けなかったとしても、3年間経験を積んでから地元に戻りフルリモートで働くという選択肢を取ることができます。
さらにお伝えすると、UZUZグループにはESESというIT企業があります。
ESESは設立2年で100名以上のエンジニアを抱えるSES企業です。そんなESESのエンジニアは、9割がリモートワークをしており、日本全国に住んでいます。
将来的にはUZUZが学校を作る地域に拠点を構え、未経験エンジニアが一人前のエンジニアに成長できる体制も作っていければと思っています。
そこで重要なのは「地方の給料」ではなく「都会の給料」が得られる環境にすること。
やはり地方の求人の収入は、都会と比べると低くなってしまいます。
「地元だと給料があまり高くないからな……」と考え、地元から離れる選択をした人は多くいると思います。
給料が理由で地元を離れる人を減らすためにも、東京にも拠点があるESESが東京で案件を獲得し、地方の優秀なエンジニアに仕事をしてもらうという流れを作ることで「東京価格で給料がもらえて、地元で働ける」という状態を作っていきたいです。
地方でエンジニアの卵が育ち、その地域に根差したエンジニアが増えていけば、だんだんとその地域にIT企業が増えていくと思います。
「地方で学んだ若者が、地方に残ってエンジニアのキャリアを積める」
このような選択肢が選べる未来を作っていきたいと考えています。
そんな専門学校を日本各地に作って、国内留学ができるようにしたい
今説明させてもらったような専門学校を、一箇所だけでなく日本各地に作っていきたいと考えています。
そして、半年ごとに違うキャンパスに移動し、現地の方々や学生と交流しながら学生生活を過ごしていく……。そのような学校の体制にしたいと思っています。
最初の半年は地元で学び、次の半年は関西へ、その次の半年は九州に行き、最後の半年はまた地元に戻る……そんな体験ができれば最高だろうなと思っています。
- その地域の学生と一緒に寮生活を送ったり
- その地域の企業や自治体と連携しながら、座学以外の体験ができたり
そんな学生生活が送れる学校にしていきたい。
私は高校まで北海道の旭川市に住んでいましたが、大学からアメリカに留学し寮生活を送っていました。
そこで、“今までの人生とは全然違う世界”での生活を通じて、数多くのことを学ぶことができたんです。
その後、東京で働き起業し、現在は地元旭川にも30名ほどの拠点を作り雇用を生み出しています。
地元を出て「外」で経験するからこそ得られたものが沢山ありましたし、「外」に出たからこそ自分を育ててくれた地元に対して恩返しをしたい、という気持ちが募りました。
- 地元でずっと暮らしていると、それが当たり前になってしまう
- 地元外の人が「地方を活性しよう」としても「よそ者」扱いされて受け入れられない
そんな空気が、日本中に漂っているように感じます。
だからこそ、よそ者ではなく“地元に根を張る若者”が、学生生活を通じて“地元以外の地域で生き抜く経験”を積み、成長し、その後“地元に戻る”ことができれば、「地元の人」と「外部の人」をうまく融合させて、その地域を発展させていけるのではないかと思っています。
そんな人材が地方にどんどん増えていけば、地方の魅力もどんどん増えて、日本の未来は明るくなる。そう確信しています。
とはいえ、今お伝えした未来を実現するためには、経験も、お金も、学校も、人脈もまだまだ足りません。皆さんの力が必要です。
「若者がウズウズ働ける世の中」に近づくために、ぜひご協力いただければと思います。
「協力してあげるよ!」「こんな情報があるよ」という方は、ぜひお気軽にTwitterのDMやFacebookにてご連絡いただければと思います!