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人事採用担当者への取材(一般社団法人キャリアラボ様)|副業人材は経営を加速させる

2023/03/06(Mon) STORY&WORKS
人事採用担当者への取材(一般社団法人キャリアラボ様)|副業人材は経営を加速させる

はじめに

経営の中枢となる人材獲得の課題について、大手企業から中小・ベンチャー企業との関わりがあるUZUZが、現役の人事・採用担当者にインタビューをする新企画。
新型コロナウイルス禍でリモートワークが浸透し、働き方改革や法整備が進んでいます。これに伴い、副業・兼業を後押しする企業は増加傾向にあります。
一般社団法人 日本経済団体連合会によると、常用労働者数300人未満の企業では、約4割が副業・兼業人材の受入を「認めている」または「認める予定」と回答しました。(※)

今回は、経営者でありながら採用業務に携わり、副業人材を積極採用している松田さんに「多様な働き方」「ベンチャー企業の採用の難しさ」について伺いました。

※出典(「令和4年10月11日副業・兼業に関するアンケ―ト調査結果」一般社団法人 日本経済団体連合会

松田 剛典|一般社団法人キャリアラボ 代表理事/株式会社みらぴか 代表取締役
神戸薬科大学・甲南女子大学・京都薬科大学 キャリアデザイン講座 非常勤講師
高校生や大学生など若者を中心にキャリア支援を行う一般社団法人キャリアラボの代表理事。全国のキャリアコンサルタントとプロジェクトを作り、キャリア支援を行なっている。講座実績は年間約4,000件以上。

熱意が溢れる先生と出会い、若者のキャリア支援を開始

―まず松田さんの経歴についてお話しいただけますでしょうか。

松田さん:
もともと大学では、文学部教育学科で臨床心理学を専攻し、カウンセリングについて学んでいました。
所属したゼミでは、実習先として病院に行っていました。しかし、自分はもっと日常的な相談に近いことをしたいと考えていました。そのため、一度企業で働きたいと思うようになり、就職活動を開始しました。

「人生の転機に携われる仕事」や、「人生の岐路で悩んでいる人」の話を聞き、一緒に解決策を考えるような仕事をしたいと考えていました。人生の転機ってなんだろうと考えたとき、受験や就職なのではないかと思い、教育としてさまざまなサービスを提供していたベネッセに入社しました。

入社1年目は高校を対象に営業をする部署でした。私にとってまず転機になったことは、今でも尊敬するある先生との出会いでした。その先生がセミナーで話されていたことに衝撃を受けました。「子どもが夢を語れないのは大人が夢を語ってないからだよ」「自分が夢を語れる大人になってチャレンジしない限り、子どもたちはチャレンジしない」と話していたのを今でも覚えています。

情熱をもって教育現場で活躍する先生を見ていく中で、自分も人の転機に関わる現場で働きたいと思うようになりました。転職するかどうか悩んでいたときに、先輩から背中を押されました。
「チャレンジしたほうがいい。やらなければ歳をとったときにずっと、「もし、あのとき・・・」と後悔するよ」と言われ、既卒者や第二新卒を紹介する人材紹介会社へ転職し、その後30歳をすぎた頃に起業しました。

自分自身が生き方に悩んだこともあり、対象は「やりたいことはあるけれどどうしたらいいかわからない」、「なかなか最初の一歩が踏み出せない」という方でした。そんな自分のキャリアについてモヤモヤしている人たちのお手伝いをしたいという形でビジネスを開始しました。

多様な人材がチームでキャリア支援を行う団体を目指す

―創業当時はどのような仕事をされていましたか?
松田さん:
当初は、個人のフリーランスで仕事を開始しました。対象も個人向けの面談でした。あるとき、学生が企業から提出されたプロジェクトに対してチームで課題について考えプレゼンを行う授業に参加しました。合宿形式のプログラムだったのですが、最終日に感動した学生がチームで涙を流す姿を見て、こんな仲間と感動を生み出せるような授業をやりたいと思い、低学年向けのキャリアデザインの授業を行うようになりました。

―現在はどのような仕事をされているのでしょうか?
松田さん:
現在は、高校生や大学生を対象に、進路選択や就職などの「将来を考える支援」をしています。個別の面談、授業やセミナー、データ分析を行うなど学校ごとに取り組む内容はさまざまです。一般的には個人の先生が実施することが多いのですが、キャリアラボの場合、それをプロジェクト単位で生徒や学生を支援しているのが特徴です。

―一般社団法人とのことですが、社内の体制や社員数など、どのようなチーム構成なのかお聞かせください。
松田さん:
現在の社員数は7名、副業で仕事をしていただいている方が6名。この13名が管理部門であり会社のコアな部分を担っています。それとは別に、パートナー契約をしている講師が北海道から九州まで全国に60〜70名、各地でキャリアラボのキャリアコンサルタントとして活動しています。

キャリアラボという名前の通り、自分たち自身が働き方について試行錯誤ができればと思っています。そのため、当初より「いろいろな立場の方が多様な働き方ができる」団体になりたいと考えていました。世の中にはフルタイムで働くことは難しくても、働く意欲が溢れている方は多数います。そんな人たちが時間や働き方に縛られずに働けるように柔軟で多様な働き方を後押しする採用戦略を作りました。現在でも社員・時短社員・副業など働き方を選べる組織を目指しています。

能力重視ではなく“人柄重視”の採用方針に舵をきったわけ

―多様な働き方、多様な人材を積極的に採用している一方で、コミュニケーションが不足するのではないか?という懸念もあります。成功事例や失敗した事例などがあればお聞かせください。

松田さん:
一番の反省はコミュニケーション不足により優秀な方に多く辞められたことです。
私たちは高校・大学向けにキャリア講座を企画しています。学校で授業を行うことになりますので、お客様が求めるパフォーマンスを達成することが重要になります。そのため、当初は経験者を中心に即戦力でキャリア支援の実績がある方とお仕事をしていました。

しかし、その場合、仕事を任せきりになり、顔を合わせることが少なく、コミュニケーションが希薄になりました。私自身も別の学校で仕事をしています。そうするとますますお互いに会うことが少なくなりました。また、私をサポートしてくれる社員に対しても余裕がないため、採用してもじっくり話すことができません。そのため、優秀な方が入社されたのに私の余裕の無さや、マネジメント経験の浅さで離職することが続きました。そこで、採用を経験や実績よりも人柄重視に変えていくようになりました。

―「人柄重視」とは、具体的にどのようなことでしょうか。
松田さん:
簡単にいうと、どうしてもコミュニケーションが希薄になりがちなので、お互いにコミュニケーションが取りやすい関係に切り替えたということです。即戦力の採用をしようと思うと、どうしても実績や経験をみます。結果的に、任せきりになっていました。採用された側も、期待されているからと過度なプレッシャーを感じてしまう。いわゆるミスマッチが生じ、双方にとってもよくない方向へと進んでいました。そこで、採用する際には、スキルの有無は関係なく社内で研修を行うことにしました。代わりに、お互いに聞きたいことがあったときにコミュニケーションが取りやすく、学生に対して熱心に向き合ってくれる方を経験の有無に関わらず採用するようになりました。

極端な話ですが、最後採用の合否に悩んだときは、「こんな弱点や苦手分野もあるけど、この人だからみんなで育てていこう」と思えるような人たちを採用することにしています。

一般的に未経験者を育てるとなると、時間も工数もかかるので、社員の理解も重要です。そのため、私だけではなく、社員全員がこの人と働きたいと思えるかを大切にしています。面接時間には限りがありますが、双方の理解を確かめるためにも極力、多くの社員に会ってもらいます。

働く人にとっても、働き方の多様化が進み、転職ということが当たり前の社会になりました。物理的に辞めない仕組みをつくるのは難しいと思います。なので、目指しているのは辞めない仕組みがある団体ではなく、「辞めたくない団体」であることです。「〇〇だけど社風がフィットしている」「〇〇だけどやりがいがある」ということが重要になるのではないでしょうか。極端な話、「いつだって辞めようと思えば辞められる。でも、この団体がいい」と選んでもらえる団体でいたいと思っています。ベンチャーである私たちの団体が採用する上で大手企業に勝るものは「団体の雰囲気」や「事業の面白さ」だと思っています。充分な福利厚生を準備出来なくても、「〇〇だけどこの団体で働きたい」と思ってもらえたら嬉しいですね。

自社では採用できない人材に出会えるのは”副業採用のメリット”

―他に、採用で力を入れていることはありますか?

松田さん:
最近は副業で働かれる方の採用にも力を入れています。団体が大きくなるにつれて、社内の経営基盤を整える必要があったのですが、どうしてもそうした高いスキルを持つ人材は採用が難しく、なかなか採用に踏み切ることができませんでした。そのため、「本当は経営に力をいれたいけど時間がない」「広報にも力を入れたいけど時間がない」といった状態が続いていました。

そんな中、副業人材の採用を始めたのですが、「多様な人材を採用することで経営が加速する」と感じています。特に大きな魅力は、「場所やエリアを越えることができる」「小さな団体では採用できないようなノウハウや知見をもった人材と仕事ができる」という2つです。

例えば私たちの会社は、キャリア支援に興味のあるキャリアコンサルタントの契約に関しては自社のHPもしくは、私が発信しているTwitterを見て応募いただく形が大半です。それでも年間100名近い方から応募があります。一方で広報活動やマーケティングができる人を採用したいと思っても応募者は全く集まりません。仮に興味を持っていただき、応募→面接→採用になったとしても、条件が合わないことや専門分野のみで力を発揮していただく場がないことも多く、採用に至りませんでした。

ですが、副業という働き方ではいろんな場所で活躍されている方の力を部分的にお借りすることができます。例えば、広報をしているが、副業をしたい。以前からキャリア支援に興味があった、といった形でエントリーしてくれます。働く時間は限られていても私たちぐらいの団体としては十分すぎます。そうした方の専門的なスキルをお借りできることは全くノウハウのない私たちにとっては大変ありがたい話です。

今までやりたいと思いながらも断念していた、最初の一歩が踏み出せるようになります。そうすると、普段忙しく時間に余裕がない経営者でも1つ歯車が周りだすと時間に余裕ができ、新しい一手が打てる、新しい一手が打てるとまた人が集まり事業が加速する、とプラスのスパイラルが生まれるので経営が加速すると考えています。

―現在も代表である松田さんが面接に入られていると伺っております。どういった思いがあるのですか?
松田さん:
経営者の仕事は、事業を続けていくためにキャッシュを作り続けること。また、お金を動かしていく仕組みを作り、人を採用し、育てていくことだと思います。特に私たちの会社は人が財産です。これまで自分自身が任せきりになりご迷惑をかけてしまった反省を含め、今後も人の採用・育成にパワーをかけていくつもりです。

そのため、採用業務の中で「一度は必ずお会いしてお話したい」という点は今後も続けていきたいと思っています。会社の規模が大きくなり、物理的に経営者とメンバーの距離が出来てしまうことはあると思っています。それでも、私は社員でも副業でお手伝いしていただいている方でもダメな部分を指摘して欲しいですし、できるだけ近い距離感で仕事を続けたいと思っています。一方で、最近は全部を自分が行うのではなく、スタッフ育成も兼ねて、業務をシフトしていけるようにしています。

―ありがとうございます。最後にキャリアラボの展望などお話しください。
松田さん:
コロナ禍で働き方の自由度は進み、今後はさらに進んでいくと思います。キャリア支援も国家資格になったこともあり、注目が高まっています。若者支援に興味があるけど未経験で不安で一歩を踏み出せない方、今は現職中であったとしても転職を考えていなかったとしても、副業という働き方で関わってみたいと思う方はぜひ、弊団体のHPを覗いてみてください。

今後も、高校生・大学生を中心に若者向けのキャリア支援を続けていきたいと思います。

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