もくじ
製造現場で大活躍?――「産業用ロボット」について知ろう!
「産業用ロボット」という存在をご存知でしょうか。産業用ロボットは、自動車の車体塗装など、製造の現場で広く利用されているロボットです。産業用ロボットと呼ばれるものには、製造現場で自動車の溶接などに使われる「多関節ロボット」といったものから、電子部品をプリント基板に実装するための「電子部品実装機(マウンター)」などが存在しています。今回は、「産業用ロボット」の業界について解説していきます!
産業用ロボット業界の基礎知識
では、産業用ロボット業界の基礎的な知識について触れてみましょう。
産業用ロボットは、2014年時点では日本国内で2.8万台、世界規模では20.5万台の販売台数となっています。世界全体の販売台数である「20.5万台」の内訳としては、全体の58%がアジアにおける販売であり、特に中国における販売台数は5万台と、なんと全体の約4分の1を占めています。
中国の産業用ロボット市場は、なぜこれほど大規模になってきたのでしょうか? 中国市場が成長している要因としては、「人件費の高騰」と「製造業における業務効率化・品質向上の追求」の2点が挙げられており、産業用ロボットの導入によって人件費を抑えつつ製品の質を保ち、世界の工場としての地位を高めようという意図があると思われます。
また、中国、日本、韓国の3ヵ国を合計した販売台数は10.2万台となっており、アジア市場での販売台数が伸びているという状況です。
なお、産業用ロボットの需要が大きい業界としては「自動車業界」と「電子・電気産業業界」の2つの業界があり、この2つの業界だけで、世界の販売台数の約60%を占めることになります。日本市場では、2011年の時点で電子・電気産業が43.4%、自動車業界が26.3%のシェアを占めており、この2つの業界だけで日本における産業用ロボットの約70%を占めています。
【基礎知識のまとめ】
- 世界全体の販売台数のうち、約半分が「アジア」での販売である
- 特に中国では「人件費の高騰」や「製造業における業務効率化・品質向上」などを理由に需要が増加
- 「自動車業界」と「電子・電気産業」において産業用ロボットの需要が高まっている!
中国はロボットメーカー激戦区!?――過去5年の業界動向
次に、産業用ロボット業界が過去5年でどのように成長・変化したかをみてみましょう。
日本の産業用ロボット業界では、2008年から起こったリーマンショックを転機に、業界動向に変化があったといえます。リーマンショック以前の2005年ごろまでは海外販売・国内販売が半々ぐらいの割合でしたが、2005年以降、海外販売が徐々に増加していき、リーマンショック後には海外販売が約70%を占めるようになったのです。
この要因としては、2000年代に中国経済が急速に伸び、「世界の工場」としての地位を確立したため需要が急増したことと、日本国内の製造業がリーマンショック後も低迷しているという2点が挙げられます。
なお、2013年ごろには、拡大を続ける中国市場に本格的に参入するべく、日本のロボットメーカーが中国に生産拠点を設置しはじめるという動きもありました。日本メーカー以外にも、スイスのABBや、ドイツのKUKAといったメーカーも参入するなど、中国では各国のロボットメーカーがトップを目指して激戦を繰り広げているようですね。
理系学生はどんな職種で応募できるの?
理系の学生がロボットメーカーに就職する際には、どのような職種が候補として挙げられるのでしょうか。産業用ロボットを開発している企業3社の新卒募集要項を調べたところ、次のような結果になりました。
安川電機
【募集職種】
技術系/研究、開発、設計、生産技術、品質管理、営業技術、営業、知的財産管理 他
事務系/営業、調達、総務、法務、人事、経営企画、経理、財務、情報企画 他
【募集学科】
技術系/理工系全学部全学科
事務系/全学部全学科
※安川電機 採用ページより抜粋 https://www.yaskawa.co.jp/recruit/recruit.html
不二越
【募集職種】
技術系/研究開発、製品設計、生産技術、営業技術、品質管理など
事務系/営業、輸出、生産管理、財務、調達など
【募集学科】
技術系/機械、精密、電気、電子、材料、情報、数学、物理など
事務系/全学部
※不二越 採用ページより抜粋 http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/recruit/newcomer/index.html
ダイヘン
【募集職種】
技術系総合職(開発、設計など)
事務系総合職(営業、企画、経理、人事、情報システムなど)
【募集学科】
技術系総合職:電気・電子・機械・情報などの専攻
事務系総合職:全学部・全学科
マイナビ2016より抜粋 http://job.mynavi.jp/16/pc/search/corp57909/employment.html
上記の募集要項を見てみると、全体的な傾向として「技術職は理工系学部(特に機械、電気・電子)の募集」がメインで、「事務職は全学部応募可」となっていますね。ただ、「理系だから技術職」と考えるのではなく、理系の知識を生かして事務職で活躍するという選択肢を検討してみてもいいでしょう。
職種について詳しく知りたい方はこちら
技術営業とは、どんな仕事?|お仕事ガイド
https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/12493/
知的財産とは?仕事内容は?|お仕事ガイド
https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/12041/
品質管理とはどんな仕事?|お仕事ガイド
https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/11513/
産業用ロボットに関するトピック2選!
2030年には、世界のロボットの3割が「中国製」に?
記事の前半では「中国におけるロボット市場の成長」について述べました。しかし、中国のロボット市場は確実に成長しているものの、「中国製ロボットのシェア」は実はまだまだ低い状況なのです。下記の記事では、「2030年に、世界全体での中国製ロボットシェアを3割まで伸ばす」という中国国内の計画が紹介されています。
中国製ロボット、2030年に世界市場の3割を占める―中国紙(RecordChina)
http://www.recordchina.co.jp/a123919.html
8時間で作業を習得するロボットが開発される
大手ロボットメーカーのファナックが、人工知能ベンチャーとして知られるプリファード・ネットワークスと、作業を自動で学習する人工知能ロボットを共同開発したそうです。このロボットは、失敗と学習を何度も重ねていき、その結果、およそ8時間で作業を習得することができるのだとか!
自ら学習する人工知能ロボット-ファナックとベンチャーが共同開発(ブルームバーグ)
もっと知りたい人向けの情報ソース
最後までご覧いただき、ありがとうございました! 産業用ロボット業界についてもっと知りたいという方は、ぜひ下記のソースを参照してみてくださいね。
『NEDOロボット白書2014』
http://www.nedo.go.jp/library/robot_hakusyo.htmlMONOist『いまさら聞けない産業用ロボット入門』
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1403/10/news006.html